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期ループ(PLL)内で発生した雑音の影響を低減するために、frepの第4高調波である1GHzを使って、RFシンセサイザーB(Agilent 8247A)に安定化した。RFシンセサイザーA, Bは水素メーザーを共通の外部基準としているため、その周波数揺らぎは同相雑音として相殺されて測定に表れてこないことに注意すべきである。fsレーザーの発振波長は1040 nmであり、これはLT-GaAsのバンドギャップ波長867nmよりも長波長である。そこで、非線形光学結晶PPLNで発生させた第2高調波(SHG)を偏光ビームスプリッターで分割し、各光量を8m Wに調整した後で2台のPCAに照射した。発生した光伝導キャリアTHzコムと0.3 THz波とのビート信号は光電流として得られるため、帯域幅40 kHzの低雑音トランスインピーダンス増幅器(FEMTO messtechnik LCA-40K-100M: LNA)を利用して電流–電圧変換を行い、多チャンネル・ゼロデッドタイムRFカウンター(K+K FXE)で2つのビート信号を同時測定した。RFカウンターの前段にあるバンドパス・フィルター(BPF1, BPF2)は周波数測定のミスカウントが発生することを防止するために挿入した。ビート周波数を36.6 kHzに設定したとき、得られたSN比は周波数分解能100Hzで約60 dBであった。4.1.3テラヘルツ周波数カウンターの安定度図19(b-A)はPCA1で測定された、0.3 THz波の周波数安定度を表している。PCA2による測定結果もこれにとよく一致しており、平均時間1秒におけるアラン分散は5.4×10–13で、3000秒以内に10–16台に達している。この安定度はRFシンセサイザーの位相雑音で制限されている(図19(b-B))。図19(a)は2つのビート周波数差δfの時系列データである。これから計算された1台あたりのPCAに等価な安定度が図18(b-C)で、4.1×10–14/τの安定度を持つことが確認された。0.3 THz波の周波数雑音、fsレーザーのfrep揺らぎやRFシンセサイザーの位相雑音などの影響は同相雑音としてキャンセルされることと、概算されたショット雑音レベルが十分に低いことを考慮すると、図19(b-C)の安定度はPCAとLNAからの雑音に起因していると予想できる。そこで、LNAの電気雑音レベルを調査するために、周波数純度の極めて高い36.6kHzの正弦波信号をLNAで増幅した後、その安定度を計測した。この調査に用いた信号は図19(b-C)よりも十分に安定であり、また振幅は実際のビート信号計測時のSN比に一致するように調整した。LNAの電気雑音レベルを図19(b-D)にプロットした。これはTHzカウンターの計測限界とよく一致しており、LNAの電気雑音が支配的であることを表している。より低雑音なLNAを開発するかビート信号強度を大きくできれば、更なる安定度の向上を期待することができ、PCA内部での光差周波発生や光伝導効果などの物理的に興味深い現象で制限された計測限界を確認できる可能性も考えられる。4.1.4テラヘルツ周波数カウンターの絶対周波数計測精度2台のPCAで測定された0.3 THz波の周波数差の時系列データ(図19(a))を1000点からなる29個の順次データセットに分割し、それらの平均値をプロットしたものが図20である。これから周波数差の平均値及び標準誤差は、それぞれ0.18 μHzと2.5 μHzと計算された。図19(b-C)から分かるように、THzカウンターのアラン分散は1/τ 依存性を持っており、白色周波数雑音よりも中心決定精度の高い位相コヒーレントな性質を持つ白色位相雑音が支配的であること図19(a) 2台のTHzカウンターで測定された0.3THz信号の周波数差(b) アラン分散による周波数安定度(A) Instability of the cw-THz source measured by PCA1. The instability measured by PCA2 was almost the same as that of PCA1. (B) Instability of the RF synthesizers. (C) Instability of one THz frequency counter calculated from the dierence between two absolute THz frequency measurements. (D) Instability of one LNA.図202台のTHz周波数カウンターで測定された0.3 THz信号の絶対周波数の差The mean of all the data points is shown as a solid horizontal line. The dashed lines express the statistical uncertainty based on the standard error.1414-7 テラヘルツ周波数標準

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