が分かるが、ここでは保守的に白色周波数雑音の場合に適用するように標準誤差を系統誤差として用いた。この系統誤差の範囲内で有意義な周波数差は観測されなかったことから、THzカウンターの参照基準に光周波数標準を採用すれば、0.3THz帯では不確かさ1.7×10–17で周波数を決定できることが示された。同様の周波数比較法を0.1THzと0.64 THzでも実施した。0.1 THz信号は出力25 mWでRFシンセサイザーAからの信号を6逓倍することで発生させた。0.64 THz信号は出力300 μWで、Gunn発振器を6逓倍することで生成した。結果を図21にプロットした。被測定THz波の周波数が高くなるにしたがって、不確かさが増加している。これはTHz波の出力減少とPCAの検出効率の低下によって、ビート信号のSN比が低下したことが原因である。しかし、測定周波数で規格化された相対不確かさで考えると、THzカウンターは0.1~0.65 THzの広い周波数範囲において、17桁の不確かさで絶対周波数測定が可能であることを示している。4.2テラヘルツコムによるTHz連続波からのマイクロ波信号合成fsレーザー光コムを構成している任意のモードの周波数は2つのマイクロ波周波数自由度で一意的に表現できる。この特徴により、光コムはマイクロ波と光を可逆的にリンクさせる多目的周波数シンセサイザーとして動作する。一方、前節ではTHzコムをマイクロ波–THzシンセサイザーとして動作させることでTHzカウンターを構築したと言える。では、THzコムをTHz連続波からマイクロ波信号を合成するためのTHz–マイクロ波シンセサイザーとしての動作させることが考えられないだろうか?これは、THz帯で動作する分周器に相当しており、将来の超高速無線通信において採用が期待されているコグニティブ通信への応用などが期待できる[60]。4.2.1THz–マイクロ波シンセサイザー(テラヘルツ分周器)の原理図22はTHzコムを利用した、THz連続波からのマイクロ波合成の原理である。PCAに入射させたTHz連続波fcwは、THzコムのk番目のモードfkとのRFビート信号を形成する。このビート周波数() は()=()−() (11)となる。() を局部発振器からの信号に位相同期させるために、fsレーザーのfrepを変調すると、THzコムのモード間隔() は、()= ()−()⁄ (12)となる。これはfcwをk分周したことを意味している。本質的に() は光コムのモード間隔frepと等しいから、fsレーザーからの光パルス列を高速フォトディテクターで直接検出することで、fcwをk分周したマイクロ波信号が得られる。実際には、フォトディテクターの出力はfrepの高調波を多数含んだRF帯のコム構造(RFコム)になっているため、適当なバンドバスフィルター(BPF)を通過させることによって、任意の整数s倍となる周波数s ×frepのマイクロ波信号を取得できる。4.2.2テラヘルツ分周器の実証実験図23はテラヘルツ分周器の実験配置図である。前章と同様に0.3 THz連続波はRFシンセサイザー1からの16.7GHz信号を18逓倍して発生させ、PCAに自由空間結合させた。光キャリアTHzコムを発生さ図21サブTHz帯(0.088~0.645 THz)におけるTHz周波数カウンターの絶対周波数計測精度These points are the mean of the frequency dierence measurements. The error bar on each point indicates the standard error.図22 THz-マイクロ波周波数合成の原理PCA, photo-conductive antenna; I/V, current-to-voltage converter; PLL, phase-locked loop; BPF, band-pass filter; f , frequency; t, time; I, current; P, light power; and V , voltage. The superscript (PC) indicates the photocarrier. 参考文献[60]より転載。142 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)4 原⼦周波数標準
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