数νmが生成したことを表現している。THz–光シンセサイザーで周波数合成された光キャリアを長さ20 kmのスプールファイバーでリモートサイトへ送信した。光ファイバーの振動や温度揺らぎを起因として、伝送中に光に印加される位相雑音はファイバーノイズキャンセル法で抑圧した。その基本原理は、大きな非対称性を持つマイケルソン型干渉計の両腕からの光の位相差を一定に保つことである。つまり、短くて機械的に安定な干渉計の片腕をリファレンスにして、もうひとつの腕と見なせるリンクファイバー内を伝搬する光の位相が常に一定になるように、ファイバー雑音を打ち消すのである。従って、伝送光は単一モードであることが要求される。FLFC1を構成する1本のモードだけを光キャリアとして送信するために、周波数νcw1=191 THzの外部共振器型半導体レーザーを伝送レーザーに採用し、FLFC1のm=1918740番目のモードとのビート周波数 が10MHzになるように位相同期させた。ファイバーノイズキャンセル用アクチュエータとして利用した、音響光学変調器(AOM)を透過した伝送レーザーはfAOM=50 MHzだけ周波数シフトを受ける。結局、リモートサイトに到達する光キャリア周波数νcw2はνcw2 =νm+fbeat2+fAOMになる。光ファイバーへの入射光量は500 μWであった。リモートサイトに設置された光–THzシンセサイザーを使って、νcw2を分周することでTHz基準信号として復元する。この光–THzシンセサイザーもfsレーザー(fs laser2)とPCA2で構成されているが、先に述べたTHz–光シンセサイザーとは異なる制御トポロジーを有している。fs laser2はfrep2=250MHzのErファイバーモード同期レーザー(Menlo Systems FC-1500)で、これから出射した光コム(FLFC2)を伝送レーザーに光ロックさせる。これにより、=(−−)/n (14)となり、分周してfrep2を発生できたことに相当する。ここで、fbeat3は伝送レーザーνcw2とFLFC2のn(=767496)番目のモードとのビート周波数、fceo2はFLFC2のcarrier-envelopeオフセット周波数である。fbeat3とfceo2はそれぞれ60 MHzと20 MHz信号に位相同期している。PCA2にfs laser2出射パルス光の第2高調波を照射して、光キャリアTHzコム(pc-THz comb2)を発生させた。pc-THz comb2のk番目のモードの周波数fk(pc)は)=k×)= − −) (15)となる。これはνcw2をn分周してRF帯にダウンコンバートした後、更にk逓倍することによって、最終的にTHz周波数が合成されることを意味している。pc-THz comb2の各モードは、ローカルサイトのTHz標準に対して、位相コヒーレンスを保存していることに注意すべきである。pc-THz comb2とTHz連続波fTHz2を比較することで、伝送システムの性能を評価した。それらのビート は、簡単な代数計算の結果として、= − + − (−++−) (16)となる。実験ではk=1200であったのでkm/nj = 1と図30 位相コヒーレントTHz周波数基準伝送の実験配置図FLFC: フェムト秒レーザー光コム、I/V: トランスインピーダンス増幅器、PCA: 光伝導アンテナ、PLL: 位相同期ループ、SHG: 第2高調波発生用非線形光学結晶、f: 周波数、ν: 光周波数、E: 電場振幅、I: 電流。pc及び上付き(pc)は光電子を表している。参考文献[62]より転載。1474-7 テラヘルツ周波数標準
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