均化時間105秒程度までは、水素メーザの安定度が優れている。そして106秒(10日)以上まで、単体のセシウム原子時計より安定しており、この特性を利用して日本標準時は優れた短期安定度を維持している。より長期では、複数のセシウム原子時計による平均原子時の方が十分に高い安定性を示すことから、日本標準時の長期安定度はこの平均原子時で維持されている。2.2計測システム計測システムは、日本標準時の決定に寄与する複数の原子時計の5MHz及び1PPSの信号、そしてそれらの信号から合成、調整された信号の位相あるいは時刻差を計測して、各原子時計の状態監視を行ったり、合成や調整の際のパラメータを決定したりするものである。したがって計測システムには、原子時計の信号特性を劣化させない低いノイズレベルを持ち、毎日の使用に耐える堅牢性が必要になる。現在の計測システムでは、水素メーザの優れた短期安定度と、10-19桁までのステップで周波数比率を調整可能な周波数調整器AOG(Frequency Standard Aux-iliary Output Generator: Microsemi製 Model-110)の性能を生かすためにNICTと日本通信機株式会社で共同開発した、マルチチャンネルDMTD(Dual Mix-er Time Difference System: Model 2172A)が中核になっている。この装置には、原子時計などから最大24の5MHz信号を入力することができ、そのうちのひとつを基準に用いて、入力された全ての信号の時刻差を、毎秒同時に計測できる。これにより計測のタイミングの違いによる時間誤差を含まない、非常に高精度の時刻差計測を実現できる。装置内での周波数変換や100サンプルの平均値計算により、0.2psの計測精度を実現している[9]。DMTDのノイズレベルを図5に示す。極めて低いノイズレベルを持っており、水素図2 水素メーザ(SD1T03C)図3 セシウム原子時計(5071A)図4 セシウム原子時計と水素メーザの周波数安定度133-1 日本標準時の維持と運用
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