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が得られれば実際のフィードを製作して電波暗室や近傍界測定器でビームパターンを、ネットワークアナライザでリターンロスを測定して性能確認を行う(図4)。この試験で問題がなければアンテナに搭載して実際の天体で性能を測定し、問題がなければ観測に使用する(図6)という流れである。鹿島における広帯域フィードの適用と性能評価             このようにして計算時間と設計手法の効率化を図った結果、1年程度で最初の実用的な設計が得られ、まず2013年末にIGUANA-Hフィードと名付けた6.5–16GHzの広帯域フィードを鹿島34mアンテナに搭載した[13]。1989年の観測開始からほぼ四半世紀後に、鹿島34mアンテナはカセグレンアンテナとしては世界で初めて広帯域VLBI実験を開始することとなったのである[7]。さらに、電波天文観測においても従来は個別の受信機とフィードの切り替えを必要としていた星形成領域からの6.7GHz/12.2GHzのメタノールメーザの同時受信も世界に先駆けて実現できた。その後も様々な観測や実験を続けながらも継続的に広帯域フィードやOMTの性能向上を図り、改良品と交換を続けている[14]。かつて正確な周期性を持つ電波放射のため宇宙人に3図5 OMTと広帯域フィード上:OMTの計算機モデルの例クワッドリッジ導波管の端部にSMAコネクタで直線2偏波のポートを設けている。フィードから見て奥の端子をPort0、手前の端子をPort1とする。直線状の切り抜き・切削のみで製作できるように設計した。中:近傍界測定装置でビームパターン計測中の広帯域フィード(京大METLAB)下:ネットワークアナライザでリターンロス計測中の広帯域フィード(NICT) これらと同じ状況を計算機シミュレーションで模擬して設計を進めていく。図6 鹿島34mアンテナに搭載したNINJAフィード(左)とIGUANA-Hフィード(右)フィードはフィードコーン内の4面に設置したトロリー架台に設置し、使用時に上昇させて切り替えるが、フィードによっては光軸中心に置けない。従前のCバンド(5GHz帯)コルゲートホーンよりNINJAフィード(3.2–14.4GHz)は小さくなり、口径は8割、軸長は4割以下である。NINJAフィードの後端にはOMTと初段の低雑音アンプがある。Port0Port11855-5 広帯域アンテナの開発

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