との周波数比較実験の前に補修工事を行なった[16]。主鏡支持構造は主に溶接組立であり、補修で部材を交換すると主鏡面が歪ひずむのはやむを得ないので、補修後に鏡面調整を行なった。ボルト組みは溶接歪みがなく組み立てや部材交換時の位置再現性も良いが定期的な緩みの点検が必要になるし、適切な防錆処理をしなければ腐ふ蝕しょくする点では溶接に対して特に有利でもない。沿岸部の橋梁などと同様に溶接前後の錆対策と保守が適切であれば錆の進行は抑えられるので、鹿島34mアンテナの使用周波数と軽量化を鑑みれば現場での溶接組み立ても合理的であろう。ボルト組みでもサビ対策や清掃がなされなければ当然に腐ふ蝕しょくする[17]。実際、鏡面精度の維持のために主鏡パネルの支持構造からの高さはネジで調整できるが、建設以降に経年変形が生じ得るにもかかわらず使用されたことがなく固着していた。鏡面調整を行うにあたって構造体の経年変形の蓄積は把握できず、エンコーダの位置校正の不備により鹿島34mアンテナでは鏡面調整の基準に使える支持構造や副鏡位置の信頼できる座標測定結果がなく、そもそもの鏡面形状も仰角に対する鏡面変形の設計仕様も不明であったので計算機モデルでの検証は省略し、直接的に広帯域フィードで静止衛星を利用したホログラフィ測定により主鏡面の調整のみを実施することとした(図8、9)[16]。従来のアンテナと異なり天体受信用のフィードを切り替えることなく人工衛星を受信してアンテナ鏡面の調整ができるのは広帯域フィードの利点のひとつである(ただし、副鏡と主鏡、フィードの光軸を合わせておらず、これらの誤差を切り分けずに静止衛星の仰角に対して主鏡面のみを調整して光路長誤差を最小化しただけであって、主鏡面を正確に設計上の修整カセグレン主鏡面に合わせたわけではないので鏡面調整の結果を「鏡面誤差」とは表現すべきではない)。3.1.2MARBLEの改修MARBLEについては主鏡とフィードの交換により感度の向上を図っている。初期設計[15]ではパラボラ図9 鹿島34mアンテナ光学系の光路長誤差調整前(左)は最大±6mm程度だったが調整後(右)は最大±2mm程度に改善された。建設時の主鏡面誤差は仕様が0.5mm(r.m.s.)、測定値では0.17mm(r.m.s.)だった。図10 旧MARBLE用NINJAフィード左:-10dB落ちビーム幅(計算値)周波数に対する変動も少なく、E面とH面の差も少ない。 右:METLABでのビームパターンの測定1875-5 広帯域アンテナの開発
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