ワー外部に観測周波数等に応じた100MHzから200MHzのバンドパスフィルタ(BPF)を交換して受信していた。しかし、2012年ころから携帯電話基地局電波による混信波がLNAを飽和させる程度まで強くなったため、この混信波を除くために2013年にLNA前段、冷却デュワー内部に東芝製の高温超伝導(HTS: High Temperature Superconductor)のBPFを設置して現在の受信周波数帯となっている。S帯は測地VLBI観測のほかパルサー時系・電波天文観測に使用され、設計受信周波数は当初2150~2350MHzであったが、携帯電話基地局の2.1GHz帯が送信を開始して、その混信防止のため2003年LNA後段、冷却受信機外部にHTS-BPFフィルタを配置して2193MHzからの受信が可能となった。その後、2013年にHTSフィルタ用冷凍機が寿命を迎えて使用できなくなり、代替の帯域阻止フィルタ(BRF: Band Rejection Fil-ter)を使用して現在の2210MHzからの受信範囲となった。Q帯はSiO(酸化ケイ素)メーザの観測に使用されてきたが、2017年より局部発振器(35GHz)の位相同期発振器(PLL)制御系故障により現在受信できなくなっている。構造部3.1レールの腐食摩耗アンテナのアジマス(AZ: Azimuth)レールの腐食摩耗の進行が問題となり、平成6年(1994年)にレールを交換し、外部からの雨風の影響を軽減する対策としてレールカバー・ホイール(車輪)カバーの取付けが行われた。図2の全体図に本稿で触れる箇所の位置を示す。ただし、レールカバー、ホイールカバーはメーカのオリジナルの設計にはなく後付のため、ここには描かれていない。レールカバーとホイールカバーの外観を図3に示す。カバー取付けによりAZレールが雨水に、直接濡れなくなり、腐食の進行は大幅に小さくなった。レール点検時にレール上に直径数センチの腐食跡が見つかり、レールカバーを構成するボルトからの雨漏りと判明したため、レールカバーと支柱・ボルト間のシールを時々行うことで雨漏りを防止した。ホイールカバーは当初、ホイール全体を覆うカバーを取り付けていたが、AZレールを雨水から守ることができるようになった一方、点検・保守の作業性が低下した。そこで、ホイールカバーを透明ビニールに交換して、さらにビニールカバー全体を取り外さなくともファス3図1 鹿島34mアンテナ受信機周波数帯偏波Tsys (K)SEFD (Jy)備考L 帯1405~1440 MHz,1600~1720 MHzRHCP/LHCP50300パルサー観測等、HTS-BPF フィルタ使用S 帯2210~2350 MHzRHCP/LHCP65350測地VLBI、常温帯域阻止フィルタ使用X 帯8180~9080 MHzRHCP/LHCP66300測地 VLBI、電波天文広帯域3.2~14.4 GHz直線 2 偏波100–200*1000–2500精密周波数比較実験K 帯22~24 GHzLHCP141*2000水メーザ、アンモニア分子Q 帯42.3~44.9 GHzmixed350*3000SiO メーザ、 局部発振器故障*: Tsys ではなく、R-Sky 法により測定したTsys*表1 鹿島34mアンテナの受信性能(2019年7月現在)図2 34mアンテナ全体図副反射鏡駆動機構位置読み取り機構32mナットプレート背面構造部AZ室レールカバーホイールカバーAZ基準軸副反射鏡AZ角度エンコーダ194 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)5 時空標準計測・⽐較技術
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