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ナーによりカバーの一部を開閉できるように改修し作業性も向上した。カバーを掛けても結露や霧などでレールが時々濡れることは避けられず、空気に触れているレールは少しずつ腐食が進行してしまう。それを防止するためレール表面に羊毛脂が配合されたフルイドフィルム(Fluid film)防ぼう錆せい潤滑剤(ユウレカグレードNAS)を塗布することで腐食防止を行ってきた。ただし、アンテナ重量約400tを支えるホイール4個がレール上を走行することによりホイール走行面では油膜切れが徐々に発生するため、レール面の状況を観察してユウレカを1か月程度の間隔で定期的に塗布することで腐食の進行を防止してきた。油膜が切れた走行面に薄く発生した錆さびを約100tの荷重でホイールが押し固めることによりAZレール上に厚さ0.1~0.2mm程度の不均一な薄膜が徐々に形成され、運用時間が長くなるとAZホイールの上下動が大きくなる。このため、年に1回はAZレール清掃を実施してきた。AZレール点検のためレールカバーには幅60cmの点検窓が設けられている。しかしレール面に対する作業を行うためには点検窓は幅が狭く非効率なため、1997年に図3(右)に示すようにレールカバーの一部を長さ約4mにわたって大きく開く構造へ改造した。この結果3人程度が同時に作業でき、かつ、レール全体にアクセスするために開口部を移動させる回数も減らすことができ、作業効率を改善した。図3ではカバーの後方となり写っていないが、レールカバー開口部の反対側にはカウンターウェイトを設けてバランスを調整し、人手でレールカバー開口部を容易に開閉できるようにしてある。3.2東日本大震災と定期保守の重要性東北地方太平洋沖地震による東日本大震災が平成23年(2011年)3月11日に発生して鹿島34mアンテナも被災した。震災により発生したAZホイール損傷に対してAZホイール等交換工事は2012年10月から2013年3月に行われた。まずは、地震による主な影響について述べる。震災の復旧のため行った震災復旧工事、AZホイール等交換工事については、“鹿島34mアンテナ2012年2013年2014年年次報告書[3]”を参照いただきたい。地震後の軸較正観測の結果、AZ残差RMSが従来値0.004度弱の4倍近い0.015度となった。この原因を調査したところ、図4に示すAZ角度エンコーダ軸と基準軸接続支柱の接続部に緩みがあった。四角い箱に角度エンコーダが固定され、その下の支柱が基準軸で、エンコーダ中心にある回転部と接続されている。角度エンコーダと接続支柱の固定部に僅かな緩みが発生しており増し締めした結果、AZ残差RMSが0.005度と改善した。基準軸の模式図を図4に示す。基準軸は地下室床面から直径305mm、長さ3.9mのセンター支柱の上に直径89mm、長さ2.4mの延長支柱、その上に角度エンコーダと接続する直径38mm、長さ0.3mの接続支柱で構成されている。基準軸は合計の長さ6.6mの自立柱である。接続支柱の上下には偏心を吸収するために自在継手で接続されており、地震動で接続支柱が大きく揺らされたためこの緩みが生じたと考えられる。鹿島34mアンテナは複数の受信機を備え、それらのフィードに焦点を調整するための副反射鏡駆動機構を備えている。地震後の定期点検で通常の点検ではほとんど見られない駆動機構の緩み等が見つかった。地震発生時の状態であるアンテナが仰角90度、つまり天頂を向いている状態において副反射鏡を水平方向に動かすX軸、Y軸、垂直方向に動かすZ1軸、Z2軸、Z3軸の5軸により副反射鏡の位置、姿勢を制御している。点検により表2の不具合が見つかった。これらは地震後、2011年の点検時に、ナット取り付け・ボルトの増し締め・センサーロッド交換・センサーの芯出し・センサーの固定等を行い復旧した。駆動時の異音については翌2012年10月から2013年1月に副反射鏡を地上に降ろした際にリニアベアリングを取り外して点検したが異常は見つからず、清掃、給脂等を行い復旧した。位置読み取りセンサーは厚さ9.5mmの鋼板等の強固な金具で固定されているが、図3 AZレールカバー(左)、ホイールカバー(中)及びAZレール作業口(右)1955-6 鹿島34 mアンテナの維持管理

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