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間を計測する仕組みである。電波を双方向に送り合って、両側で計測した値を手にすることで時刻差と伝搬時間の両方を計測することができるのである。3.2無線双方向時刻比較ワイワイ[3][4]は前節で説明した双方向時刻比較を民生用無線通信機に実装することにより衛星双方向時刻比較で実績のある時刻同期技術を非常に安く、小さなモジュールへの搭載を可能にした。もちろん同期エリアは電波の届く範囲に限定されるが、衛星双方向時刻比較と遜色ない同期性能を示した。衛星双方向時刻比較では搬送波位相を双方向に比較して周波数を高精度に比較する手法と時刻を比較する手法の2つがあり、ワイワイでも両方の手法を活用している。ワイワイにおいては、まずマスターモジュールとスレーブモジュールの搬送波位相を比較して、両者の搬送波位相の頭が揃うようにスレーブモジュールの内部時計の周波数を微調整する(位相ロック)。位相ロックが成立すると、離れた2箇所にある時計が電波の往復を介して全く同じ周波数で時を刻むようになる。位相ロックが成立した状態で今度は時刻をやり取りして時刻差を計測、修正する。時刻の差は位相ロックが続く限りずれることはないので、正確な時刻比較が可能となる。この時刻合わせは並走している2台の車(例えばスレーブ車とマスター車とする)の頭を揃える作業に例えることができる。ここでそれぞれの車の位置は時刻、スピードは周波数に対応する。スレーブ車はマスター車の位置を見て、自分が遅れていれば加速し、進みすぎれば減速することで常にマスターの車と同じ位置を走り続けることができるのである。これと同じ仕組みのフィードバック機構をワイワイモジュールは実装している。ワイワイモジュールワイワイモジュールの構成について図4を用いて説明する。ワイワイモジュールのコアとなるのは通信チップ(Tx, Rx)と恒温槽型水晶発振器(OCXO: Oven-Con-trolled Crystal Oscillator)とマイコン(MPU)である。TxとRxには周波数920MHz帯でIEEE802.15.4g規格に準拠した民生用通信チップを改造して用いた。通信チップ、OCXO、スイッチをマイコンで制御し、またそのマイコンで各種データをUART経由でUSB接続したPCに送ることができる。このモジュールをスレーブとしてマスターに位相ロックする際にはワイワイによって得たフィードバック信号をOCXOに帰すように、マイコンが制御を行う。電波法に基づく無線機の技術基準適合証明を取得し、誰もが自由に使える弐号機と、高出力にして簡易無線局の登録が必要な参号機を試作した。ワイワイモジュールの仕様を表1にまとめた。実際に位相ロックをしながら時刻同期のジッタをワイワイ位相比較計測値から評価すると、20ピコ秒であった[5]。時刻同期精度はモジュールのデジタル回路のバグにより制限されており、今後改善の余地がある。4図4 ワイワイモジュール回路ブロック図と弐号機及び参号機の写真SwitcherTxRxOCXOMPUUARTAntennaPC20mW250mW表1 ワイワイモジュール仕様まとめ弐号機参号機周波数922〜928 MHz通信規格IEEE802.15.4 g準拠(周波数変調)出力ワット数20 mW250 mW通信確認距離(見通し有)100 m(地上1.5 m)4 km(塔の上同士)出力信号10 MHzと1 ppsPCとのインターフェースUSBシリアル通信時刻同期精度1マイクロ秒 時刻同期ジッタ(位相ロックジッタ)20ピコ秒距離変動計測偏差6 mm/計測(ベストエフォート)2036-1 繋つながるついでに高精度時刻同期

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