はその翌月に公表され、UTC(NICT)の周波数調整に利用される。周波数校正サービスへの影響を抑えるため、UTCへの同期調整は必要最低限の頻度で実施されている。図6は最近のUTCとUTC(NICT)の時刻差を示すものである。UTC(NICT)はおおむね20ns以内の違いでUTCに一致しており、高精度な時系として国際的に認められている。また表1はTAI決定への貢献が大きい機関について、その貢献の程度の変遷を示したものである。NICTは現在約40台(全世界の台数の約9%)の時計データを報告しており、各時計への重み付きを足し合わせてTAI決定におよそ7%の貢献を成している。その順位は2018年において世界3番目となった。近年、TAI計算における原子時計への重み付けの方法が変わり、水素メーザの寄与がより高く評価される形となった。NICTは水素メーザの運用にも実績があり、TAI決定に大きく貢献できている。2.4機器更新と電源設備現在の第5世代の日本標準時発生システムは2006年2月に運用を開始した。10年以上連続で使用している機器もあり、性能の劣化や重大な故障が突然起こる懸念も生じてきた。そこで2016年から原子時計、マルチチャンネルDMTD、信号分配アンプ、オシロスコープといった主要な機器を更新して信頼性と操作性を向上させた。現在のシステムでは機器間の通信に主にRS-232CとGPIBを用いているが、本特集号3-2「⽇本標準時の分散化」で解説される日本標準時の分散化システムでは、より汎用性が高いEthernetを、本部を含めた分散局で統一的に利用する予定であるため、適合する機器への変更も行った。また日本標準時システムの安定運用のためには、災害などによる商用電源の停止も含めた、非常時の確実な電源確保が重要になる。各計測装置は、緊急時には、日本標準時システムがある建物専用の発動発電機から電力が供給される。さらにセシウム原子時計などの重要装置には、施設内の3基の大型無停電電源装置(UPS: Uninterruptible Power Supply)からも交流電力が供給される。セシウム原子時計や周波数調整装置(AOG)などは、交流と直流の2系統の電源入力が可能なため、日本標準時システムと同じフロア内に蓄電池型の直流無停電電源を設置して、非常時用として併用している。全ての装置には瞬間停電に対応できるUPSが接続されており、十分な電源冗長系を確保している。さらに2017年には、従来の発動発電機が稼働中に万一不具合を生じても大丈夫なように、発動発電機の冗長化(増設)を実施した。これにより非常時を含めた運用の信頼性が格段に向上した。日本標準時の運用と公表業務以上の方法で維持されるUTC(NICT)とJSTであるが、NICTは幾つかの方法でこれを国内外に供給している。その主な方法としてNTP(Network Time Protocol、ネットワークによる時刻供給)、標準電波、テレホンJJYがあり、各々には十分に多重化、冗長化された方法で信号を分配している。また各供給方法により通報された日本標準時は、国民生活の安全安心に不可欠なものになっており、その正確さは国際的に高く評価されている。そこでNICTは、それらに関連する情報をインターネットWebページ[11]などで公表している。さらに、うるう秒の挿入などの不定期な日本標準時の調整について、国民生活が混乱しないように、事前の周知や対応方法の提示などを行っている。3表1 TAI決定への貢献が大きい機関の各年の寄与率(%)(各機関の所属国USNO:アメリカNPL:イギリスF:フランスNICT:日本IT:イタリアNIST:アメリカNTSC:中国NIM:中国SU:ロシアSP:スウェーデンAPL:アメリカ)2014年2015年2016年2017年2018年1USNO33.16USNO30.7USNO32.326USNO29.238USNO25.442NICT7.669SP7.366SU8.851SU12.494SU14.0643SP6.603SU7.106SP6.423SP6.969NICT7.1934SU6.499NICT6.272NIST5.659NICT6.153SP6.245F6.261NTSC5.953NTSC5.401NIST6.145NIST6.1346NIST4.448F5.673NICT5.164NTSC4.582NIM5.3757NTSC4.164NIST5.358F4.728F4.409NTSC4.7758NIM3.301IT3.687IT3.411IT3.171F4.2889PTB3.024APL3.328APL3.146APL3.124NMIJ2.61910IT2.859NIM3.029NIM2.52NIM3.113PTB2.547153-1 日本標準時の維持と運用
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