伝搬時間計測の応用例:インフラ変形モニター私達が第一に目指しているのは「繋つながるついでに時刻同期」を実現し、新しい情報通信の基盤を構築し、時空間同期に基づく新しいサービスを生みだすことであるが、その実現には事業開発、標準化、法整備、国際連携を同時に進める必要がある。事業開発のヒントとなる実験を紹介する。ワイワイの伝搬時間計測は、微小距離の時間変動を計測するポテンシャルを持っている。伝搬時間に光速をかけることで距離が計測できるため、理想条件下では、ワイワイの位相計測により伝搬距離の時間変動を精密に測ることができる。「理想条件下では」と言うのは、1.電波の反射・マルチパスなど電波伝搬環境が変わること2.アンテナの相対的な角度が変わることにより計測される位相が変動するため、精密な測定が可能となるのはそのような誤差要因が問題とならない実験環境に制限されるからである。このような理想的な条件を満たす応用例として、文献[5]では4.2km離れた2地点間の大気の屈折率変動計測を報告した。本稿では鉄塔頂上の微小変動計測を行った結果を紹介する。図5に60mの鉄塔の傾斜を計測した際の実験装置の配置を示す。この実験は情報通信研究機構(NICT)本部にて2017年3月に行われ、この当時はまだワイワイモジュールを用いず、920MHzの通信機とソフトウェア無線機の組合せで屋外実験を行っていた。ワイワイモジュールにより距離変動を計測した結果を、建設現場で実績のあるレーザー測距計(ニコントリンブルNST-305CN)による計測結果と比較した(図6)。ワイワイとレーザー測距の結果を見ると、毎日正午ごろに2cmほど距離が短くなっていることが分かる(距離変動は反転軸になっている)。これは、日が昇る5図5 鉄塔傾斜計測 実験配置図a)サイドビュー b)実験装置124m12a)b)図6 計測結果-0.500.511.522.50.000.010.020.030.040.050.063/13/23/33/43/53/63/73/83/93/103/113/123/13[mW/1][mm/h][m]Td[m]Ts[m]Sun[mW/m^2]Rain[mm/h]204 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)6 時空標準技術の社会実装を⽬指して
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