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ここから周期境界条件で式(17)を解くことを考える。そのため、 をフーリエ級数展開すると、cossin (18)が得られ、同様に| についてもフーリエ級数展開すると、| ⃗ ⃗ cos ⃗ sin (19)となる。ここで、 はフーリエ級数展開の最大次数であり、数値計算の時間分解能を決定する重要なパラメータである。 はフーリエ係数であり、9次の列ベクトルである。 は を結合した行列であり9 行列である。なお、 は形状関数であり、1,sin ,cos ,⋯, sin ,cos (20)と表される。これらを使うと、重み付き残差法により以下の式が得られる。| (21)ここで、 は9 の零行列である。| と はフーリエ展開していること、正弦関数と余弦関数は直交基底関数であることから、式(21)の左辺の各係数行列要素は簡単に求めることができ、 (22)が得られる。 は9 の全体行列である。式(22)に規格化条件 (∑) を加えて、 を解くことで| の各フーリエ級数の重みを計算することができ、| の時間発展が求まる。4.3 従来法と提案法の比較従来法と提案法の比較のために、最大の周波数偏移 を500 Hz、10 kHzに設定したときのCPT共鳴の時間応答特性を図6及び図7に示す。本解析では、バッファガスとの衝突を考慮して励起準位の緩和率を2π×720 MHz、基底準位間の緩和率を2π×100 Hz、ラビ周波数を1 MHzに設定している。図6では最大の周波数偏移 をCPT共鳴の線幅とほぼ同じの500 Hzに設定している。そのため、光強度は周期/2 で変化している。従来法では、透過光強度変化の遅延が生じ、分割数Nc が小さいほど遅延量が大きい。これは、時間分割することによって生じるsincフィルタによる影響である。一方で、提案法では、遅延は生じず、遅延量はNp に依らず一定であった。したがって、同期検波など透過光強度信号の位相情報を利用する場合、提案法はより解析に有利であると言える。図7では をCPT共鳴の線幅より十分大きい10 kHzに設定している。図6とは異なり、周波数が原子共鳴の遷移周波数に一致した時に鋭い共鳴線が得られるのが確認できる。この条件では、時間応答の解が高次のフーリエ周波数成分を持つため、低い では良い計算精度を得るのは難しい。しかしながら、図8に示すように、数値解の収束から考えると、提案法は従来法より効率の点で優れる。ここで,縦軸の数値誤差はL2ノルムで表しており、 = 2048の数値解析結果を真値として計算している。横軸の計算時間はNp = 128の時の計算時間185 msを1として規格化している。計算に使用したCPU及びメモリ容量はそれぞれIntel CoreTM i7-6700 Processor、40 GBである。本図から、ノイズ解析等を対象として相対誤差を−60 dB以下に設定する場合、提案法は従来法の約1(a)従来法(b)提案法図6 CPT共鳴の時間応答( =500 Hz)0.00.20.40.60.81.00.00.51.0Light intensity (a.u.)Time t/Tmod0.00.20.40.60.81.00.00.51.0Light intensity (a.u.)Time t/TmodNc= 32 Nc= 128 Nc= 512 Np= 8 Np= 32 Np= 128 2136-2 原子時計チップ:量子部設計のための高速シミュレータの提案

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