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3.1各供給系とそれらへの信号分配NICTでは2005年に専用線等を用いてNTPサーバから時刻供給を行うサービスを始めた。また2006 年からは「インターネットによる時刻情報提供サービス(公開NTP)」を開始し、現在は毎秒100万リクエスト以上の処理能力を持つ専用サーバを複数台運用している。最近では日に数十億回以上のアクセスがあり、コンピュータネットワークの中で正確な時刻を供給している。NICTのNTPサーバ(stratum 1)には、UTC(NICT)の5MHz信号を2逓倍した10MHz信号と1PPS信号が接続されており、信号線やサーバ機器の多重化、冗長化が行われている。標準電波では1999年から長波帯での送信が始まり、2001年からは国内2送信所から供給されている。送信の内容は総務省設置法などで規定されており、送信された電波は1日の平均化時間で10-13内の周波数安定度と、日本標準時に対して100ns以内の同期精度を保っている。標準電波の信号源となる周波数と時刻は、各送信所で運用する商用セシウム原子時計から得られている。これらは国際間の時刻比較と同様の方法でNICT本部の周波数標準及び日本標準時と比較され、一致するように調整される。またNICT本部でも標準電波を受信し、UTC(NICT)やそれを基準とするNTPサーバからの時刻信号を基準に、受信された電波の位相と時刻の監視を常時行っている。テレホンJJYは電話回線を利用した供給方法で、現在1か月に17万件以上の利用アクセスがある。インターネットを利用しないセキュリティ性、供給側と利用側が1対1で接続される安定性、さらにミリ秒クラスの精度を特長としており、銀行、放送、鉄道等の公共性が高い分野で利用されている。また近年、光電話回線の利用が進み、その高速性を生かした「光テレホンJJY」が2019年2月から正式運用された。テレホンJJYと光テレホンJJYにも10MHzと1PPSのUTC(NICT)の信号が提供され、時刻発生に用いられている。これら以外にもNICTは、行政サービスなどの電子化に必要な電磁的記録(電子ファイル)の時刻承認を行う制度への貢献や周波数校正サービスを実施しておりUTC(NICT)を利用している。各供給方法について本特集号3-3「長波帯標準電波送信所の運用」から3-6「周波数・時刻差校正」までに詳しい解説がある。3.2公表業務と周知活動NICTでは日本標準時の利便性を高めるため、法令または規定などに従って、必要な情報を一般に公表している。日本標準時に関するものとしては、近年、情報通信に多大な影響を与えうる「うるう秒」の関係など、下記を公表している。① うるう秒の実施の予定について② 世界時のひとつであるUT1とUTCの差③ TAI決定へのNICTの寄与率と寄与が大きい世界上位10機関名また標準電波については、国家標準として総務省告示第382号の規定に基づいたものなど、下記が公表されている。④ 標準周波数(JJY)のUTC(NICT)に対する周波数偏差⑤ NICT本部での受信波のUTC(NICT)に対する周波数偏差と相対位相差⑥ 標準電波送信所の現在の送信状況と今後の一時的な計画停波の予告⑦ 標準電波送信所の定期保守に伴う停波予告⑧ 受信電界強度予測値とその計算プログラムさらに標準電波以外の日本標準時の供給についても下記を公表している。⑨ 各供給の運用状況と計画停止の予告(テレホンJJY、NTP、タイムスタンプ関係)⑩ テレホンJJYの月別及び時刻別アクセス状況(テレホンJJY関係)⑪ NICTによるGPS受信データ(GGTTS形式)(校正、タイムスタンプ関係)公表される情報は適宜更新されており、電話やメール等でも問い合わせに応じている。日本標準時に関するWebページ[11]では、標準時の歴史など幅広く理解できるように構成されている。さらにNICTでは日本標準時専用の展示室を運営しており、外国からの来訪者から国内一般まで、広く視察見学を受け入れている。2018年度には、時空標準研究室への取材・電話応答が128件、日本標準時展示室の視察見学が74件(加えて多くの見学者がNICTオープンハウスに来訪)、また標準電波送信所への取材・見学が7件となっており、日本標準時への関心の大きさを示している。3.3うるう秒への対応UTCと世界時UT1の差を0.9 秒以内に調整する「うるう秒」調整が不定期に行われる。地球の回転の観測を行う国際機関である「国際地球回転・基準系事業(IERS:International Earth Rotation and Reference Systems Service、所在地:パリ)」がその実施について決定し、世界同時に行われる。UTCにおける毎年6月または12月の最終日23時59秒の後に行われる可能性があり、JSTでは7月1日または1月1日になる。1972年1月1日(JST)にUTCをTAIから10秒遅れと調整した後、これまで27回のうるう秒調整が行われた。いずれもUTCに1秒の挿入を行い、TAI16   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム

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