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からの遅れを増加させる方向である。IERSの決定は、通常その実施日の半年程度前に関係機関に周知される。実施の連絡を受けて総務省及びNICTは、報道発表等で国内に周知し、日本標準時の調整について官報、公報への掲載を行う。同時にNICTでは調整に向けた技術的な準備を行う。日本標準時発生システムで発生させる信号は5MHzと1PPSであるので、うるう秒の調整でこれらを直接操作することは無い。しかし、それをカウントアップした時刻に誤りがないように、機器などに事前の設定を行う。例えばセシウム原子時計、日本標準時表示器、標準電波送信信号発生装置、NTPサーバ、テレホンJJY信号発生器に、うるう秒挿入の時刻やその予告に関する情報を設定する。その後も設定値の確認作業を日常点検で行い、当日も送信所を含め各システムに担当者を配置し、うるう秒調整を確実に実施している。図7は2017年1月1日に実施されたうるう秒の挿入について、NICT内の標準時表示器を写したものである。うるう秒に関する国際議論などについては、本特集号の7を参照いただきたい。3.4サマータイム日本語のサマータイムはイギリス語名称(Summer Time)に由来しており、アメリカ、カナダ、オーストラリア等では、デイライト・セービング・タイム(Daylight Saving Time: DST)と呼ばれている。夏中心の時期に太陽が出ている時間を有効利用するため、その地域で利用する時刻を、通常より1時間程度進める制度またはその時刻のことを指す。日本でこの制度は連合軍占領下の1948年から4回実施された。日本の主権回復後も省エネルギー対策などを理由に何度か検討されたが、全て未実施であった。2018年には、2020年の東京五輪・パラリンピックを含む期間の実施が検討され、NICTでも独自に、実施となった場合に予想される作業の検討を行った。NICTが通常通報する時刻はUTC(NICT)と日本標準時JSTである。サマータイムの期間中に国民が一般に利用するDSTにも、便宜上JSTの名前を適用する案がある。この場合、サマータイム開始時と終了時にJSTに大きな時刻の飛びが生じるため、情報通信などに混乱が生じないようにしなければならない。JSTの発生及び供給に関して、どの様な対策が必要になり得るかを検討した。先ずJSTの基になるUTC(NICT)はサマータイムの影響を受けない。しかしJST監視システムにおいて、例えば監視の時刻がJSTで設定されるなどUTCとJSTの併用があり、万一そこでJSTが不完全に処理されると、サマータイムの開始時などに大きな混乱が生じる。そこで現在の計測システムのソフトウェアを点検して、全てをUTCのみで時刻管理していること、また今後追加改修するシステムもUTCのみを利用することを確認した。JSTの監視システムがUTCのみで管理されることから、サマータイムの導入の検討については、各供給での対応が重要になってくる。標準電波による標準時通知では、① 標準電波で送信する時刻は、従来どおりUTC(NICT)+9時間とするか、またはサマータイム時刻DSTとするか。② 標準電波の時刻コードの利用法として既に提案されている、サマータイムの実施及び予告を通知する「予備ビット」の活用を実施するか、または実施しないか。が検討課題となった。2018年の検討では、①についてはこの時点で、標準電波の時刻情報を利用する機器の多くがサマータイムに未対応であるため、DSTを送信する選択の方が、より混乱が少ないであろうという意見であった。②については、もしサマータイムを導入する場合には、導入後に対応が浸透してきたころの利便性を考えると、提案どおり予備ビットを活用する選択が良いであろうという意見であった。なお、①と②でどちらの選択を行っても、手動による設定や制御の改修が必要な標準電波利用機器があることが確認された。以上は一般社団法人日本時計協会とも共有されたが、あくまで2018年時点での検討であって、将来の導入については、その時点での再検討が必要という認識となった。テレホンJJYのサマータイム対応では、+(プラス)1時間までのサマータイムは、送信設備側で対応可能であったが、受信設備側の端末まで対応が十分である図7 2017年1月1日の8時59分60秒(JST)を示す標準時表示盤173-1 日本標準時の維持と運用

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