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はこれを日本標準時と称している)、実際にもこの標準時が広く利用されている。国際的にもNICTは国の標準時を維持する機関としての処遇を受け、時間周波数諮問委員会(CCTF、2参照)の正式メンバーに登録されている。位置基準に関しては、VLBIシステム開発において国内外から高く評価され、国際VLBI技術開発センターの役割を担うとともに、国際地球基準座標系・国際天文基準座標系の構築については、国立天文台・国土地理院と共に国際地球回転観測網に参加してきた。特に、鹿島26mアンテナ・34mアンテナが長年にわたり国際地球基準座標系における日本の位置の基準となってきたことは、大きな貢献と考えられる。またGNSS測地においては、国土地理院との協力の下IGS観測網に参加し、世界測地系構築に貢献してきている。本稿では、時間・周波数標準に関する国際的枠組みへの貢献としてはメートル条約に基づく国際委員会2及びアジア太平洋地域での活動3について、位置基準に関してはIGSにおける活動4及びVLBIに関する国際活動5についてそれぞれ紹介する。また国際天文学連合(IAU)及び国際電波科学連合(URSI)に関する活動について、6で紹介する。各分野で個別の研究機関との共同研究等も精力的に行ってきているが、個々の研究成果の詳細については論文等を参照いただきたい。なお本文中には組織の英語表記など多数の略語が頻出するが、参照のたびに初出箇所を探すのも煩雑なため、その正式名称を本編の最後にまとめた。計量の国際標準に関する活動2.1メートル条約に基づく活動計量の国際基盤は1875年に締結された外交協定「メートル条約」[1][2]である。これは、「メートル法を国際的に確立し、維持するために、国際的な度量衡標準の維持供給機関として、国際度量衡局BIPMを設立し、維持することを取り決めた多国間条約」[2]であった。正式加盟には国としての資格と分担金の納入が必要であり、日本は1885年に加入している[1][3]。メートル条約に基づく最高議決機関は、正式加盟国の代表者で構成される国際度量衡総会(CGPM)であり、原則4年ごとに開催される。CGPM決定事項の代執行機関は国際度量衡委員会(CIPM)である。CIPMは事実上の理事機関であり、日本を含む国籍の異なる18名の委員から構成され原則年1回開催される[1]–[3]。国際度量衡局(BIPM)はCIPM下の機関である。図1にメートル条約に関連する国際的枠組みの構成を示す。CIPM下には現在、長さや質量など分野別に10の諮問委員会(CC)が置かれ、課題はここで具体的に検討される。CCは研究実績のある国家計量標準機関(NMI)を中心に構成される[2]。時間・周波数に関する諮問委員会はCCTFであり、そのミッションは、「秒の定義とその実現、国際原子時TAIと協定世界時UTCの確立と普及及び時間と時系に関するCIPMへの助言」である[4]。CCTFは現在、チェア及び26の機関・5つの国際組織・4つのオブサーバーから構成され[4]、BIPMが事務局を務める。また課題別に9つのワーキンググループ(WG)を有する(表1)。2016–2026年の期間におけるCCTF及び各WGの構成・ミッション等はCCTF-strategyドキュメントで公表されている[5]。総会は原則3年ごとに開催され、通常の流れでは、一次周波数標準器・標準時系・国際時刻比較・次世代技術(光周波数標準やファイバリンク等)・CIPM相互承2図1 メートル条約に関する国際的な枠組み[1][2]国際度量衡委員会(CIPM)諮問委員会(CC)CCTF(時間・周波数)メートル条約国際度量衡総会(CGPM)国際度量衡局(BIPM)・1875年創設の国際条約。・日本は1885年に参加。・現在56カ国が加盟。・全加盟国代表で構成する最高議決機関。・約4年毎に開催。・国際単位系の承認と更新。・CGPMからの18名の代議員。・毎年開催。・BIPM監督・CC議長を出す。・事務局、研究業務。・NMI・DI・MRO間の比較の運営。関連国際機関(IAU, IEC, IFCC, ISO, WHO…)・原子周波数標準に基づく時間標準の実現を推進。・秒の定義をCIPMに勧告。分野別に、他9つのCCNMI:国家計量標準機関DI:指名計量標準機関RMO:地域計量組織(日本のNMIはNMIJ、NICTはDI)226   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)7 時空標準研究室における国際標準化活動

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