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のちNMIから指名を受けることでCIPM-MRAに参加可能である。このような機関は指名計量標準機関(DI)と呼ばれる[1]。NICTはDIである。NICTは周波数国家標準を所掌してはいるが、CIPM-MRAにおいてはNMIカテゴリーに属さないので注意が必要である。アジア地域における国際活動3.1アジア太平洋計量計画(APMP)地域レベルでのNMI間協力は、主に地域計量組織RMOという枠組み(図2)で調整される。RMOのひとつであるAPMP [12]は1977年に設立され[1]、CIPM-MRA構築以前からの歴史を持つ。APMPのミッションは、貿易促進や市場での公平性確保を打ち出すなど経済・産業面からの視点が色濃い[12]。特に各機関のCMC審査は重要な課題である。APMPはまた開発途上経済圏を支援する活動にも注力している。APMPの構成を図3に示す。日本からはFull Member としてNMIJ、NICT(1999年加盟)、化学物質評価研究機構、日本電気計器検定所が参加する。分野ごとに12の技術委員会が設置されており、NICTはAPMP総会、品質システム管理に関する技術委員会(TCQS)及び時間・周波数に関する技術委員会(TCTF)に参加し、現在、TCQSには小竹昇が、TCTFには、機関代表者として井戸哲也が、WGメンバーとして市川隆一が出席している。各技術委員会会合やワークショップを含む総会は年1回12月頭頃に開催される。これまでの実績としては、TCTFにおいて議長を2期(2002–2004年:今江理人、2008–2011年:細川瑞彦)務め、国際相互承認の立ち上げ期における合意形成や、承認を受ける期間が増えていく中で手続きを議論し改善を進めるなどの役割を果たすとともに、衛星双方向時刻比較WGチェア及びコーディネータ(双方ともに藤枝美穂)として機関間調整に尽力した。また2017年からは、衛星時刻比較の国際キャリブレーションプログラムにおいて、BIPMから一次校正局として指定されたアジア3機関の1つとして、市川隆一・後藤忠広が中心となり他機関の校正活動を行っている。その他、ドイツ物理工学研究所(PTB)が2014–2018年に実施した、発展途上国における計量計測の技術向上を目的とするMEDEAプロジェクトに参画し、ワークショップでの講師(2016–2017年:市川隆一)やインドネシア科学院計量研究センター(RCM-LIPI)での現地技術指導(2017年:市川隆一・成田秀樹)を担った。CIPM-MRA関係では、CMC審査の事務局を岩間司・齊藤春夫・伊東宏之・小竹昇等が中心となり2008年から2014まで務め、審査基準の明確化や査察者を決めるうえでの手続きを改善するなどを行うとともに、伊東が主導してCMC標準化マニュアル(不確かさ計算のガイドライン)を作成するなど(2011年にTCTF採択)、アジア太平洋地域における技術向上を牽引してきた。3.2国際ワークショップ開催など現在TCTF活動の一環として行われている国際ワークショップATF[13]は、NICTが2000年に開催したATF2000に端を発する。時間・周波数分野において欧州・米国ではそれぞれ定着した国際ワークショップが開催されるが、アジア地域でもそのような研究交流の場を設けたいというのがATF2000開催の動機であった。ATFは好評を博し、その後各国持ち回りで隔年開催する時期を経て、2015年からは3図2 地域計量組織RMOの分類 [11]228   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)7 時空標準研究室における国際標準化活動

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