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として採用された[17]。2001年にIERSは、VLBI・GPS・SLR・DORISの各宇宙測地技術を要素とする組織改変を行い、VLBIの国際組織である国際VLBI事業(IVS)が設立された。NICTからは近藤哲朗氏がIVSの初代運営委員会委員となり、また、IVSのVLBI技術開発センターとしてシンポジウムを毎年開催し、国内のVLBI研究開発の成果を集約して IVS NICT-TDC Newsとして海外の研究機関に情報発信を続けている。TDC Newsは日本のVLBI技術を海外のVLBI研究者に知らせる窓口として高く評価されている。VLBI技術開発センターとしてNICTが世界に影響を与えたその代表的な成果は、(1)VLBI標準インターフェース(VSI)の制定(ハードウェア、ソフトウェア及びデータフォーマットVDIFの共通仕様策定も含む)、(2)ソフトウェア相関器の開発と展開である。5.3VLBI標準インターフェース(VSI)及び共通データフォーマット(VDIF)VLBIの国際共同観測は、様々な国の電波望遠鏡が同時に同じ天体を観測し、そのデータを併せて解析(相関処理)して初めて観測結果が得られる。しかし一方で、VLBI観測システムの開発機関(MIT-Haystack観測所(米国)、アメリカ電波天文台(米国)、CRL(日本)、国立天文台(日本)、SGL(カナダ))はそれぞれ独自の技術に基づく観測システムを競って開発していたため、データの互換性は解決すべき重要なテーマであった。2000年、CRLは1ギガビット毎秒の記録速度を持つ観測システムを開発し、それまで先導的であった米国MITの技術と同等以上の技術力を持つに至った。同年NICTで開催された国際会議GEMSTONEの会合をきっかけに、VLBIの標準インターフェースの制定協力が急速に進展し、CRLとMIT Haystack観測所が主導してハードウェアの標準仕様VSI-Hの仕様が標準化された。当時ECLに代わる高速な電気接続仕様として先進的なLVDSがVSI-H仕様に採用されたが、この成果創出にはCRLの中島潤一が大きく貢献した。2000年代後半には、高速インターネットを通じてVLBIデータを伝送するe-VLBI技術が進展する。2009年1月にガリレオ・ガリレイの観測400年を記念する世界天文年イベントとして、世界中の電波望遠鏡を高速インターネットでリアルタイムに接続し、地球直径の仮想電波望遠鏡で宇宙を観測する実験が行われた(図5)。日本からはNICT鹿島34mアンテナが独自開発した観測システムとデータ伝送ソフトウェアを使ってこの観測に参加し、実験を成功させた。これら国際的なデータ互換の実績と技術力を基礎として、2008年上海天文台で開催された第7回国際e-VLBIワークショップにおいて、ネットワーク上のパケット及び観測システムのファイルとしてのデータフォーマットを共通化するため、世界各地域を代表して米国図5 2009年1月の世界天文年のリアルタイムVLBI観測に参加した世界の電波望遠鏡と鹿島34mアンテナ232   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)7 時空標準研究室における国際標準化活動

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