かは不明であった。テレホンJJYは公共性の高い分野で利用されることから、導入の場合には受信設備側の確実な確認と改修が必要と考えられた。一方、NTPや光テレホンJJYなどのサービスでは、UTCが送信される規定であることから、対応は利用者側で行われる。ここでもUTCからDSTを算出するソフトウェアの改修などが利用者側に求められる可能性がある。2018年11月に自由民主党は2020年のサマータイム導入に必要な法案提出を断念すると表明した。サマータイム検討関連でNICTが記載された2018年の新聞紙面記事は、著者らが確認した範囲で9件である。その他に多数のWebまたは雑誌記事を確認している。今後の展開とまとめ第5世代の標準時システムの導入から13年以上が経過して、この間、周波数制御のアルゴリズムの変更や監視機能の強化など様々な改良が行われた。幸いなことにこれまで日本標準時が停止するような大事故や災害は発生しなかったが、2011年の東日本大震災などを経て、日本標準時の運用には、より高度な耐災害性が求められている。一方で、セシウム原子を利用した従来の一次周波数標準器よりも、2桁以上の精度を持つ光時計が実現され、「秒の再定義」が実施される国際的な機運が高まっている。さらに、時空間を従来以上に精密に計測し、効果的に利用しようとする試みが、新しい情報化社会を目指すなかでより盛んになっている。このような状況の中で、日本標準時システムも新しい第6世代の開発検討の時期に至っている。その中では、本特集号3-2「⽇本標準時の分散化」で解説されているように、日本標準時を決定する原子時計を国内の複数の局に分散配置して、仮に地域的な甚大災害が発生したとしても、時刻を正常に発生できる局がある限り、連続な日本標準時の発生を維持する日本標準時の分散化の取組がある。またNICTで開発したストロンチウム光格子時計を、標準時系の周波数調整に利用することで、従来以上に高精度な時系を発生させる試みも含まれている。新しい日本標準時システムでは、これらの特長を十分に生かしながら、同時にこれまで積み重ねたシステムの安定運用のノウハウを発展させて、高度な計測技術に裏付けされた安心安全な社会の実現に貢献することを目指している。また社会の基礎インフラとして、国民全体から更に支持される日本標準時システムの実現を目指している。【参考文献【1https://www.bipm.org/en/committees/cc/wg/wgpsfs.html2Y. Hanado, K. Imamura, N. Kotake, F. Nakagawa, Y. Shimizu, R. Tabu-chi, Y. Takahashi, M. Hosokawa, and T. Morikawa, “The new Generation System of Japan Standard Time at NICT,” International Journal of Navigation and Observation, vol.2008, Article ID 841672, 2008.3花土ゆう子,“原子時系発生システムの高度化に関する研究,”博士論文,電気通信大学,2008. 4中川史丸,花土ゆう子,伊東宏之,小竹 昇,熊谷基弘,今村國康,小山泰弘,“日本標準時システム概要と高度化,”情報通信研究機構季報,vol.56,nos.3/4,pp.17–27,2010.5今村國康,“日本標準時の運用と供給,”情報通信研究機構季報,vol.56,nos.3/4,pp.87–95,2010.6H. Hachisu, F. Nakagawa, Y. Hanado, and T. Ido, “Months-long real-time generation of a time scale based on an optical clock,” Scientific Re-ports, vol.8, 4243, 2018. 7伊東宏之, 細川瑞彦, 梅津 純, 森川容雄, 津田正宏, 高幣謙一郎, 植原正朗, 森謙二郎, “水素メーザ原子周波数標準器,”通信総合研究所季報,vol.49,nos.1/2,pp.85–92,2003. 8https://www.microsemi.com/product-directory/cesium-frequency-references/4115-5071a-cesium-primary-frequency-standard9F. Nakagawa, M. Imae, Y. Hanado, and M. Aida, “Development of multichannel dual-mixer time difference system to generate UTC (NICT),” IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement, vol.54, no.2, pp.829–832, April 2005. 10森川容雄,“時間・周波数の定義と国際原子時/協定世界時,”通信総合研究所季報,vol.49,nos.1/2,pp.25–32,2003.11http://jjy.nict.go.jp/松原健祐 (まつばら けんすけ)電磁波研究所時空標準研究室研究マネージャー博士(理学)周波数標準、標準時、レーザー分光中川史丸 (なかがわ ふみまる)電磁波研究所時空標準研究室主任研究員博士(理学)時間周波数標準、時刻比較伊東宏之 (いとう ひろゆき)総務省国際戦略局技術政策課技術企画調整官博士(理学)周波数標準、レーザー分光蜂須英和 (はちす ひでかず)電磁波研究所時空標準研究室主任研究員博士(工学)光周波数標準、光格子時計とその応用418 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム
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