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業部会にはNICTからは細川瑞彦・小山泰弘が参加しており、その初代部会長は、2012年から2015年まで時間委員会の副委員長を務めた元BIPMのF. Arias氏が就任している。2018年の総会時に最初の会合が開催され、各参加機関の天文学に関わる時間標準の活動報告の場となるとともに、うるう秒の問題、光周波数標準と秒の定義改変の問題、CIPM、特にCCTFと単位諮問委員会(CCU)に対するリエゾンとしてのIAUの立場の議論などが行われている。6.2国際電波科学連合(URSI)URSIは1919年に設立された電波、電気通信及び電子科学分野の研究の連絡と推進を図る国際学術団体であり、IAUと同様国際学術会議(International Science Council)に属している。日本はURSIの設立当初から他の8か国とともに加盟しており、NICTの中にはURSIと関わりの深い研究分野は多い。URSIには、専門的な分野ごとに10の委員会(Commission)が設置されており、時空標準研究室は電磁波計測(Electromagnetic Metrology)を扱うCommission Aに主に関わるほか、電波天文学のCommission Jや、測位などに関連するその他の分野の委員会でも研究発表を行ってきた。URSIは1922年に1回目の総会を開催して以降これまでに32回の総会(現在はGeneral Assembly and Scientific Symposiumを略してGASSと呼ばれる)が開催されており、日本での開催としては1963年の東京、1993年の京都に続いて2023年に札幌コンベンションセンターで開催されることが決まっている。1963年の東京総会の際には、国際的に著名な標準関係者が当時の電波研究所の研究を視察したことが記録に残っており、その後のNICTにおける時空標準研究の活発な国際的活動へとつながる大きなイベントになったようである[26]。URSIでは、総会に加えて2001年に東京での開催によって始まったAP-RASC、さらには2015年からAT-RASCがそれぞれ3年ごとに開催されるようになり、毎年いずれかの国際会議が開催されるという体制になった。NICTは2001年のAP-RASCにおいて豪州の計量標準機関NMLと共にCommission AのConvenerとしてその礎を築くなど、これらの国際会議の開催の際に組織委員に加わり積極的に関わっている。2011年からは小山泰弘がCommission AのVice Chairに就任したのち、2014年から現在までChairとしてCommission全体のとりまとめや国際会議のセッションの運営を行っている。URSIのCommission Aの対象分野は電磁波の計測に関する研究開発全般であり、広範囲にわたるが、逆に他のCommissionの対象となる研究課題も多く、結果として時間周波数標準の研究発表が半数以上を占めて主要な研究対象分野となっている。近年では、光周波数標準の研究開発や、その精密な相互比較などが活発に取り扱われているほか、本特集号7–2で詳しく述べられるうるう秒廃止の是非を中心とした協定世界時の将来問題のURSIにおける議論もこのCommissionが主導している。まとめNICTでは、前身となるRRL及びCRLの時代から、時間・周波数標準及び位置基準の構築に関わる国際的枠組みに参画してきた。これらの活動は、関連する枠組みや組織が現在の形に成熟する以前からのものも多く、国際標準を確立する過程に大小の足跡を残してこられたのではないかと自負している。この成果は、関連する研究・業務に携わった先達の長年にわたる努力の賜物でもある。海外の機関から個々人の名を出して謝意を伝えられることも多い。このような国際的枠組みでの活動は、技術的な議論もさることながら、異なる文化や慣習の中での立場の主張や地道な調整も必要であり、また目に見える成果が出ないことも多く、成果創出に効率の良い仕事とは言い難いかもしれない。だがこのような活動が現在の先端技術を支える基盤であることは間違いなく、世界中の多くの研究者・技術者が多忙な中活動に参加している。我々も、これまでに培った国際社会の信頼と当該分野におけるエキスパート集団としての実力を保ちつつ、引き続き国際活動での貢献を目指していく。英語略称(フルスペル):和名AIST(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology):産業技術総合研究所APMP(Asia Pacific Metrology Program):アジア太平洋計量計画AP-RASC(Asia Pacific Radio Science Conference)ATF(Asia-Pacific Workshop on Time and Frequency)AT-RASC(URSI Atlantic Radio Science Meeting)BIPM(Bureau international des poids et mesures):国際度量衡局CC(Consultative Committees):諮問委員会CCTF(Consultative Committee for Time and Frequency):時間周波数諮問委員会CCU(Consultative Committee for Units):単位諮問委員会CDP(Crustal Dynamic Project)CGPM(General Conference on Weights and Measures):国際度量衡総会CIPM(International Committee for Weights and Measures):国際度量衡委員会CIPM-MRA(CIPM-Mutual Recognition Arrangement):CIPM相互承7234   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)7 時空標準研究室における国際標準化活動

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