の86 400分の1であった[1]。一方、1900年代に入り科学技術が発達してくると、地球の自転速度は潮汐摩擦などの影響によって一定ではないことが判明した。秒は度量衡の7つの基本単位の1つであり、その値は科学技術の発展に大きな影響を与える。1954年の第10回CGPMの決議に基づいて1956年の国際度量衡委員会(International Committee for Weights and Measures : CIPM)で採用、1960年の第11回CGPMで批准された[2]のは、自転速度よりも変動が少ない地球の公転を基にした暦表時を基準とした秒の定義だったが、1967年の第13回CGPMでセシウム原子の遷移周波数から求める秒の再定義に変更となった[3]。ここでは秒の定義自身は天文時から原子時に変更となったが1秒の長さについては混乱を避けるため、1956年CIPMで採択された「秒は、暦表時の1900年1月0日12時に対する回帰年の1/31 556 925.974 7倍である」に準拠している。2.2時系(time-scale)ITU-R勧告などUTC関連の文書において、頻繁に用いられる時系(time-scale)という用語であるが、時間を刻みとして実際に構築された座標系であると考えれば理解しやすい。実際に構築される前の抽象的に定義された段階のものは、日本語では同様に時系と訳されるが、Time-systemと記されるので注意が必要である。その座標系の基準と刻みの大きさ(1秒)の違いにより様々な時系がある。ITU-R勧告TF.460-6のAnnexには、以下の3つの時系について記述されている。勧告TF.460-6に記述されている要点をまとめると以下のようになる [4] 。世界時(UT : Universal Time)UTは地球の回転(自転)に基づく天文時系であり、UT0は天文台の観測から得られる本初子午線における平均太陽時、UT1はUT0から極運動による効果を補正して計算された天文時系である。国際原子時(TAI : International Atomic Time)国際単位系(SI:The International Standard of Unit)による1秒の長さはセシウム原子の特定の振動周期から定義される。TAIとは原点を1958年1月1日0時にUT1と一致させ、以降、刻みをSIの1秒、1日を86 400秒として積算した連続な原子時系であり、国際度量衡局(International Bureau of Weights and Measures:BIPM)によって維持・管理される時系である。協定世界時(UTC)UTCは、ITU-Rによって定義され、国際地球回転・基準系事業(International Earth Rotation and Reference Systems Service:IERS)の協力を得てBIPMが維持する時系で、標準周波数及び時刻信号の供給の基礎とな図1 様々な時系238 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)7 時空標準研究室における国際標準化活動
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