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これらの事項はほとんど現在のうるう秒廃止の意見と一致する方向性である。この後はITU-R SG7 WG7 で opinion を作成し関係方面に照会を行う方針についても決定された。これによりSRGもUTCの決定方法の議論からこれまでの議論の経緯と方針についてまとめることに活動の重心が変わっていった。3.2.2WP7AにおけるITU-R勧告TF. 460の改定案作成SRGによるトリノUTCコロキウムの方向性の決定を受け、WP7Aにおいても2004年の会合以降、UTCの将来問題について議論が活発化した。2005年のWP7A会合では以下のような方針が決定された。••SRG のこれまでの活動について整理し、活動報告書にまとめる••2004-2005 年のうるう秒変更に関する状況をまとめ、報道資料にして公表する••2005年12月末のうるう秒挿入の経験などを基に、関係する国際機関や国家計量標準機関に意見照会を行い、2006年のWP7A に提出して議論を行うこれを受け、2006年のWP7A会合でSRGの最終報告書が入力され[9]、また2006年のうるう秒挿入に関するアンケート結果などが提示された。しかしながら、うるう秒挿入に対するアンケートの回答件数が全部で13件と少なく、かつ、問題点についてのレポートはGPS利用機器関連と(日本からの)ネットワークサービス関連で多少あったのみであったこと、また他の機関から強い賛成あるいは反対の意見が得られなかったことなどから2006年に方針の決定を行うことは難しく継続審議となった。2006年のWP7A会合の大きな成果として、WP7A会合の前の週に終了した国際天文連合(International Astronomical Union:IAU)からのレポートが紹介された。ここで、IAUとしては変更に対し反対をしないが、システムの変更等に伴う移行期間として少なくとも5年は必要である由、提示された。なお、このレポートはIAUの「UTCの定義に関する作業部会」にてまとめられたが、この作業部会にはNICTから細川がメンバーとして参加しており、IAUの意見のとりまとめに尽力した。2007年のWP7Aでは、新たなtime scaleの定義については今後調整することとして、ITU-R勧告TF. 460-6の改定について集中的に議論を行った。WP7Aでは技術的な議論のみを行うことを前提に、標準局が通報する時系として何がふさわしいか、という観点から現在、天文航法などの衰退や通信等の発展による連続時系に対する必要性の高まりとUNIX timeやGPS timeなど複数のシステム依存型の連続時系が乱立することによる混乱回避のため、また現在DUT1よりも高精度にUT1-UTCの値が入手可能であることなどを踏まえUTCからうるう秒調整を無くすことに的を絞って議論された。この意見については以前からロシア、ドイツ、米国などが積極的にうるう秒廃止の意見を入力しており、今回イタリアとBIPMを通じてCIPM管轄下の時間周波数諮問委員会(Consultative Committee for Time and Frequency : CCTF)からもうるう秒廃止を推進する意見が入力された。日本では2006年のWP7A会合の議論を受け、総務省が複数の業種に対し、過去のうるう秒調整による影響とUTCの将来的な変更の是非についてのアンケート調査を実施した[10]。ただしこのアンケートはUTCの将来的な変更形態として2005年に米国から提案され、WP7A内で議論されていたうるう秒をうるう時に変更する案で実施している。このため、GPS製造業者から「システムの対応状況を含めて、実施段階で異常動作など社会的な混乱を引き起こす可能性がある」との意見が寄せられている。このアンケート結果から日本のタイムスタンプ事業がうるう秒の影響により停止しなければならないことが示され、具体的なうるう秒調整の弊害として今後のWP7A等の議論に影響を与えることとなった。これらの議論を受け、WP7Aではうるう秒廃止を軸としたITU-R勧告TF. 460-6の改定草案を作成した。この勧告草案は2008年、2009年と議論され英国及び中国の反対意見はあったものの技術的議論は尽くされたとして2009年のWP7A会合にてSG7へITU-R勧告TF. 460-6の改定案が送られた [11] 。3.2.3SG7におけるITU-R勧告TF. 460の改定議論ITU-R勧告TF. 460-6の改訂案は2009年のSG7で議論されたが、賛成する国と反対する国の間で話し合いがつかなかったため、より多くの国の意見を聞くため回章CACE/516で各国にアンケート調査を実施した [12] 。調査項目は以下の4項目ですべてYes or Noで回答する形式であった。① あなたは(天文時へのリファレンスを提供するために)現在のUT1とUTCの関係性を維持することを支持しますか?② あなたは昨今うるう秒を導入することに技術的な困難を抱えていますか?(もしYesならばその理由を説明してください)③ あなたはITU-R勧告TF. 460-6の改訂を支持しますか?(その理由を説明できますか?)④ もしITU-R勧告TF. 460-6の改訂が承認され242   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)7 時空標準研究室における国際標準化活動

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