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メリットをまとめ、ロシア、英国などが現行のUTCのメリットをまとめお互いに議論を交わしながらCPMレポートとしてまとめていった。日本からは••タイムスタンプサービスがうるう秒調整の前後で数時間にわたり発行を停止せざるを得ないこと。••日本を含むアジア・オセアニア地域では朝の就業時間中に発生するため社会的な影響が大きいこと。の2点がCPMレポート中に反映された。議題1.14については関係する国際機関などから広く意見を求めるため、2013年9月にITU-RとBIPMの共催でWP7A会合の後にITU-BIPM Workshop “Future of International Time Scale”が開催された [18]。本WorkshopではITU-R、BIPM以外に国際地球回転・基準系事業(International Earth Rotation and Refer-ence Systems Service : IERS)、IAU、国際標準化機構(International Organization for Standardization : ISO)、国際測地学及び地球物理学連合(International Union of Geodesy and Geophysics : IUGG)などの国際機関、測位衛星関係各企業などから発表があり日本からも実際にうるう秒の影響を報告しているタイムスタンプ業界から発表を行った。これらの発表は今後への資料としてWP7Aでまとめられた。また、国際電波科学連合(International Union of Radio Science : URSI)では、何度か総会ごとに議題には上っていたが、本格的には2014年に開催された総会及び科学シンポジウムの会合(General Assembly and Scientific Sym-posium : GASS)の期間中に、小山泰弘(当時:国際推進部門国際連携推進室長)が委員長を引き継いだ電磁波計測委員会のビジネス会合でUTCの将来問題についての議論が行われ、同委員会の勧告としてまとめられた。この勧告は、うるう秒調整を廃止し、UTCを連続時系とすることが望ましいとする意見が記載されており、GASSの期間終了後にITU-RのWP7Aに参照文書として入力された [19] 。IAUにおいてもこの問題については2009年頃、再度Working Groupが設置され、NICTからは細川瑞彦(当時:新世代ネットワーク研究センター 研究センター長)がメンバーに加わった。2006年の結論がこの時も主要意見ではあったが、うるう秒継続を強く望む声も一部にはあり、両論併記でまとめられた報告書は運営委員会(Executive Committee)に上げられたが、公式にはITUへは送られなかった。CPMレポートに掲載するMethodを決める段階では、当初は、現行のUTCからうるう秒調整を取り除く方法と、現行のUTCと新たな連続時系を導入する方法の大きく2通りであった。しかし、後者の現行のUTCと連続時系を併用する方法が英国が提案する現行UTCと連続時系を同等に扱う方法と、ロシアが提案する現行UTCをそのまま報時し連続時系はUTCとの差分で表す方法の2つの方法に分かれた。合計3つの方法がそれぞれMethod A、B、CとなりWRC-15に向け細かく規定されていった。Method Aについては、米国、フランスなどはUTCをそのまま利用することを強く押し、日本もそちらに同調したが、英国が連続時系でUTCの名称を使用することに強く反対し、ロシアもITU-BIPM WorkshopでISOの発表者が「物理的状態が変化するならば名称も変更すべき」とい発言したことを根拠にUTCの名称使用に反対したため、Method AはUTCの名称を引き継ぐMethod A1と名称を変更するMethod A2に分割された。Method Cにおいても連続時系としてロシアが主張するTAIを用いるMethod C1と任意の連続時系を設定すべきとするMethod C2に分かれた。最終的には表3に示すように大きく3部類、5つのMethodが決められCPMレポートに記載された [20] 。3.3.3APG-15の活動UTCの将来問題がWRC-15の議題になったことから、この問題は地域連合においても議論されることとなった。アジア・太平洋地域の地域連合はアジア・太平洋電気通信共同体(Asia-Pacific Telecommunity : APT)のWRC-15準備会合(APG15会合)がWRC-12からWRC-15の間に5回開催された。APG15における議題1.14関連のWGでは日本、韓国、オーストラリアなどが最初からうるう秒廃止を積Method A1:UTCへのうるう秒調整を廃止し、新たな連続時系を導入する。新たな連続時系は、「UTC」の名称を引き継ぐ。Method A2:UTCへのうるう秒調整を廃止し、新たな連続時系を導入する。新たな連続時系は、「UTC」とは名称を変える。Method B:現行UTCの定義を維持しつつ、新たに(うるう秒調整を廃止した)連続時系を導入し、2つの時刻系を共存させる。Method C1:現行UTCの定義を変更しない。連続時系を使用する場合は、国際原子時(TAI)とする。Method C2:現行UTCの定義を変更しない。連続時系の使用は任意とする。● CPM15-2で追加Method D :研究(study)の結論が出ていないため、現行UTCの定義を変更しない。表3 WRC-15で検討されたMethod2457-2 国際電気通信連合(ITU)における活動 —「UTCの将来問題」を中心に—

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