く対立した。会期の中盤にこのままでは議論が対立した状態で結論に至らないため、新たな標準時系の決定をWRC-23にする新たな決議案を米国が提出し、ロシア、英国がこの決議案で妥協する姿勢を見せたため、Methodについての議論は棚上げし、新決議案のドラフトを行ってサブWGでまとめあげた。Methodについての議論が棚上げされたことに納得できないオーストラリア、韓国、中国及び日本の呼びかけで急きょAPTの臨時関係会合を開き、APTとしてはあくまでもMethod A1を支持していくことを確認した。同様に不満を持つフランスと共にWGの場でMethodの議論を求めたが、ロシア、英国及びWG議長から新決議案が唯一の全体の妥協案であるということでMethodの議論は却下された。新決議案はプレナリまで承認を受け議題1.14に対する新決議(Resolution 655)として採択された。新決議では、••ITU-RはBIPM、CIPM、CGPMの関係を強化し、今後、うるう秒調整の廃止を含む次期標準時系について検討を実施し、2023年に開催予定のWRC-23までに提言を行う••この検討には、加盟国、関係の国際機関、産業界、利用者団体も参加すること••現行のUTCは、勧告ITU-R TF.460-6に基づきWRC-23まで維持することなどが盛り込まれた。また、RRの“1.用語と定義”の1.14項の「UTC」についてはこれまで「勧告ITU-R TF.460-6に定義する」と記述されていた部分は削除され、代わりにこの新決議を参照することとした。3.4WRC-15以降の状況WRC-15以降、WP7Aでは決議655(WRC-15)に基づき、現行のUTCと次期標準時系が影響を与える無線通信システムとその応用技術の洗い出し及びそれらの影響度合いについて評価する報告書を作成している。決議655(WRC-15)を受け2018年の第26回CGPMでは、時刻の定義について決議2の中で勧告している [22]。1つめの勧告は、現在のUT1 - UTCの上限値についての検討であり、もうひとつはUT1 - UTCの予測精度の向上とその公表の方法についてである。この決議から、CGPMとして「UTCの将来問題」に取り組むことを決議したこととなり、今後CGPMの決議を受けてCIPM及びCCTFで議論され、その結果がCGPMを通じて2023年のWRC-23にフィードバックされ、「UTCの将来問題」に寄与することなるであろう。NICTとしてもCCTFとWP7A双方に積極的に参加してWRC-23に向けた議論を深めていきたい。タイムビジネスNICTのITU-Rにおける近年の活動のトピックとして、タイムビジネスに用いる時刻トレーサビリティについての勧告(ITU-R TF. 1876)の制定がある。タイムビジネスについては2010年度発行の情報通信研究機構季報(vol.56 nos.3/4)及び本特集号の3–4「インターネット社会の標準時供給」で詳しく述べられているので、ここではITU-Rにおける標準化についてまとめる。日本のタイムスタンプ認定制度は2005年2月に開始され、その当時タイムスタンプの付与及び検証については暗号技術を用いているため、IETF(Internet Engineering Task Force)のRFC(Request For Com-ment)などのようなインターネット業界で標準化がされており、その一部は国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)、日本工業規格(Japanese Industrial Standards:JIS)による標準が制定されていた。しかしながら、タイムスタンプのもうひとつ重要なファクタであるタイムスタンプ時刻の信頼性については明確な基準が制定されていなかった。そこで、2000年のWP7A会合に、タイムスタンプ局が用いる時刻の信頼性をいかにして確保するかについて研究することを日本からの研究課題(Question)として提案した。研究課題は修正のうえ採択され「研究課題ITU-R 238/7タイムスタンプ局の信頼できる時刻源(Question ITU-R 238/7 Trusted Time Source for Time Stamp Authority)」として研究されることとなった [23] 。 その後、日本の実証実験等を基に技術報告を入力し、2009年9月のWP7A会合において日本の時刻配信局(Time Authority : TA)が時刻の配信と監査に責任を持つ仕組みについて勧告案を提出した。提出された勧告案は時機を得た勧告案として各国から好意的に受け入れられ、TAをタイムアセスメント機関(Time Assessment Authority : TAA)にするなどの表現の修正などはあったものの、ほぼ日本提案がそのままSG7に送られ、その後、SG7の採択とITU-Rの承認手続きを経て、2010年4月に勧告ITU-R TF. 1876として承認された [24] 。勧告ITU-R TF. 1876はその翌年の2011年5月にJIS X 5094 : 2011として日本工業規格となり[25]、2015年には上記のタイムスタンプの体系や暗号化技術等が制定されているISO/IEC 18014にpart4として追加されISO/IEC 18014-4 : 2015として国際標準化された[26]。更にこのISO/IEC 18014-4 : 2015は、JISにフィードバックされJIS X 5094 : 2019として2019年3月に改正されている [27] 。42477-2 国際電気通信連合(ITU)における活動 —「UTCの将来問題」を中心に—
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