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標準時分散化の研究開発本章では、標準時分散化の実現に向けてこれまでに実施したプロセス、これらから実施する研究開発について、項目ごとに説明する。3.1分散局の整備表1に標準時分散化における各局の構成を示す。小金井本部を本局とし、日本各地に分散化の拠点となる分散局を整備した。現時点の分散局は、新たに整備した神戸副局と、既に原子時計が設置されていた2つの標準電波送信所局から構成されている。(1)小金井本局東京都小金井市にあるNICT本部内に設置されている、現用の日本標準時システムを、標準時分散化における小金井本局とした。本局では、標準時発生システム、供給システム等、全てのシステムから構成されており、各システムは以降構築する分散局の参考とされている。通常は本局で生成する時刻を日本標準時とし、国際時刻比較及び国内への供給サービスに使用する。(2)神戸副局小金井本局に準ずる標準時副局として、新たに、兵庫県神戸市にあるNICT未来ICT研究所内に標準時神戸副局を開設した。規模としては本局よりやや小さいものの、本局とほぼ同じシステム構成となっており、小金井本局から標準時が生成・供給できない場合は神戸副局を現用とし標準時の生成・供給を開始する。詳細は4で述べる。(3)おおたかどや山局、はがね山局(共に標準電波送信所)2つの標準電波送信所では、標準周波数及び標準時の通報を目的とした電波を送信しているが[4]、その基となるセシウム原子時計が複数台設置されている。これら既存の原子時計を新たに標準時分散化に組み込むべく、2つの送信所を標準時の分散局として使用できるように整備した。NICT以外の国内の各機関においても、時系維持以外を目的とした原子時計が設置されている。それらの原子時計が標準時分散化に容易に参加できるようにすることも将来的な目標のひとつである。3.2各局間の時刻比較リンク・データリンクの構築標準時分散化では、各局に設置された原子時計と各局で生成した時系の全ての時刻差を知ることが最も重要となる。すなわち、全原子時計間の時刻差を得ることにより初めて、より精度の高い合成原子時が生成でき、それが日本標準時の高精度化につながる。また、全ての生成時系の時刻差を正確に計測することにより、日本標準時に対するトレーサビリティが確保でき、各局での時刻の信頼性向上につながる。そのためには、(1)各局間の時刻差を比較する時刻比較リンクの構築、(2)各局内の原子時計・時系の時刻差を計測する計測システム、(3)これらのデータを集約するデータベース、のそれぞれの構築が必要となる。(1)については、GNSS(Global Navigation Satellite System)時刻比較方式[5]及び衛星双方向時刻比較(TWSTFT: Two-Way Satellite Time and Frequency Transfer)方式[6]を採用し、各拠点における基準時系(局内の代表生成時系や、任意の原子時計等)間の時刻差を定期的に計測する。各局で生成された時系は、定期的に時刻比較リンクの校正を行うことによって、そのトレーサビリティを確保している。小金井本局のみの運用では、時計間の出力する信号を直接測定器で計測可能なため、合成原子時の計算において測定系の誤差を考慮する必要はなかった。しかし、時刻比較リンクにより時計間の時刻差を算出する場合は、信号を直接計測した場合の誤差に比べてリンク誤差は極めて大きく、測定誤差を考慮した時系生成アルゴリズムの3局名所在地セシウム原子時計水素メーザー供給サービス小金井本局東京都小金井市18台6台NTPTEL-JJY光TEL-JJY周波数校正タイムビジネス神戸副局兵庫県神戸市6台2台NTP光TEL-JJYおおたかどや山送信所局福島県田村市/川内村6台-標準電波(40kHz)はがね山送信所局佐賀県佐賀市/福岡県糸島市6台-標準電波(60kHz)※黄色は分散局表1 標準時分散化における各局の構成233-2 日本標準時の分散化

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