送信停止(停波)を相互に補完して全体として連続供給が可能になること、より安定に標準電波を西日本で受信できることを目的に、はがね山標準電波送信所(送信周波数60kHz)が2001年に開設された。同じ年には短波帯による標準電波の送信が終了して、これにより世界でも例が少ない長波帯による複数局での標準電波の供給が始まった。これ以降、365日24時間連続送信の体制で、おおたかどや山標準電波送信所の開局から数えて20年以上にわたり標準電波を送信している。標準電波の到達範囲と送信所設備の概要現在の標準電波送信所の概要として送信所の位置、標準電波の到達範囲、送信所設備について説明する。2.1標準電波の到達範囲と送信所の位置標準電波の到達範囲について、2つの送信所の位置と、その放射電力から計算される地上波の電界強度を図1に示す。市販の電波時計が受信して利用できる強度として送信所から約1000kmを想定できるので、一般への時刻供給として、2局体制で日本全土をカバーできることが分かる。より高感度な受信機を用いれば、どちらの送信所の電波も国内全域で受信できるが、電離層反射波との干渉が無視できなくなり、朝夕など時間帯によっては安定な位相で送信周波数を受信できない場合もある。実際の電波強度は、各地の地形や建造物の特性などに大きく依存するので、標準電波の恒久的な受信設備を設置する場合には、事前に電界強度の実地測定を行うことが望ましい。2.2標準電波送信所設備の概要標準電波送信所の設備については他にも詳しい文献がある[2]。ここでは概要を説明する。標準電波送信所の諸元を表1に示す。また標準電波発生の構成を図2に示す。主な設備に原器室、時刻信号管理室、送信機室、整合器室、空中線(アンテナ)、自家発電機がある。原器室は温度湿度管理された電磁界シールド室であり、標準電波の送信信号は原器室内のセシウム原子時計(Microsemi 5071A)の信号から生成される。各々の送信所には3台以上の原子時計が設置され、この内の2台が冗長性を成している送信信号発生系のそれぞれの原振として利用されている。原子時計を3台以上運用して相互比較することで、異常の発見やその場合の機器交換を容易にしている。時刻信号管理室に設置された計測システムでは、原子時計の時刻と周波数信号及びそれらを調整して発生させる信号を相互比較している。そして原子時計などの時刻信号は、通信衛星や測位衛星を仲介としてNICT本部の日本標準時(JST)と比較されている。その比較から原子時計の5MHzの信号をJSTに同期するように周波数調整し2図1 送信所の位置と標準電波(地上波)の推定電界強度30 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム
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