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て、それを送信信号の基準としている。その基準から毎秒のタイミング信号(1PPS)、時刻を示すタイムコード、送信周波数(40kHzまたは60kHz)を発生させ、それらを重畳して送信信号を発生している。原子時計から送信信号発生までを、標準電波の発射に現用する系と予備系の独立した2系統で並行運用している。現用系に異常を発見した場合に予備系に切り替えるほか、定期的に系の役割を交代させて、規程に沿った安定な標準電波の送信信号を発生させている。時刻信号管理室から送信機室に信号が送られる時、時刻信号管理室に電気ノイズが混入しないように、送信信号は一度光信号に変換される。送信機室で再び電気信号に変換された送信信号は、定格50kWの送信機(米国Continental Electronics社)に入力される。送信機も2台設置されており、送信信号発生と同じく冗長性を持たせることで、安定した送信を実現している。送信機の電力増幅はMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)による48枚のアンプモジュールで構成されており、故障時にはモジュール交換によって迅速に復旧させている。整合器室では、大型の可変コイルでリアクタンスを時々刻々変化させ、アンテナへのインピーダンス整合を維持しており、これにより良好な状態で電波を発射している。整合器室の内側には銅板の電界シールドが隙間なく貼られており、室外への強い電界の流出を防いでいる。アンテナの高さは敷地面積などを考慮して、電波の到達範囲など設置目的を満足するように決められた。アンテナへの給電点には耐圧200kVの大型碍子が使われている。放射効率を上げるために接地抵抗を小さくする必要があり、角度1°ごとに360本のラジアルアース銅線が、約150mの長さでアンテナを中心に敷地内に埋設されている。標準電波送信所は山頂付近にあるため、災害で送電線が切断した時などに商用電源が容易に復旧しない場合がある。そこで送信所にも自家発電用の大型発動発電機が設置されている。商用電源が一週間程度停止しても、自家発電で標準電波を発射し続ける能力を持っている。その他、送信所で発生させる時刻に同期させたNTPサーバーを利用して、送信所内の計算機や機器の時刻を正確に維持している。おおたかどや山送信所(標高790m)はがね山送信所(標高900m)運用開始日1999年6月10日2001年10月1日場所東経140°51’北緯37°22’東経130°10’北緯33°28’アンテナ形式傘型(無指向性)傘型(無指向性)アンテナ高さ250m200m送信周波数(標準周波数)40kHz60kHz出力(実効輻射率)50kW(25%以上)50kW(45%以上)電波形式A1BA1B表1 標準電波送信所の諸元図2 標準電波発生の設備と送信までの構成313-3 長波帯標準電波送信所の運用

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