雷の可能性を判断している。落雷の危険が大きいと判断すると、監視員は電波送信を一時中断してアンテナを地絡させて、送信設備から切断する。落雷の危険が小さくなれば速やかに送信を再開する。落雷により送信機が被害を受けた場合には、2台設置するうちの正常な送信機に切り替えて送信再開している。被害を受けた装置は保守部品を用いて早期に補修している。落雷などの影響で商用電源が停止した場合には、自動で自家用発電機が発動して送信を続けている。おおたかどや山送信所とはがね山送信所の周辺(各10km四方)で、2014年から2018年に観測した落雷の総数は、5月から10月までの夏中心の時期では、おおたかどや山で664回、はがね山で1309回であった。一方、同じ5年間の11月から4月までの時期では、おおたかどや山で48回、はがね山で122回であったので、落雷は夏中心に多い。図4は上記で集計した落雷数のそれぞれで、落ちた雷の電流分布を示したものである。おおたかどや山に比べると、はがね山では通年で分布が大きな電流(絶対値)まで広がっている。はがね山送信所は九州北部の脊振山地にあり、冬には大陸からの季節風と対馬暖流上空の湿った空気が混ざり合って吹き寄せて、周辺には積乱雲が生じやすい[7]。そこで夏冬問わず電流が大きい激しい落雷の危険があるので注意が必要である。3.4台風及び降雪の影響厳しい気象条件下の送信所では落雷と同様に、台風による被害も発生している。各送信所に至る公道及び専用道路では、倒木や豪雨による路肩の崩れなど、通行に支障を来たす災害が年に1回程度以上ある。また送信所の敷地周辺でも、台風による山の斜面の崩壊が発生している。はがね山標準電波送信所では、北側山麓の「白糸の滝」から送信所への市道と専用道路(国有林の借地とNICT所有地の混在)とが、山と谷に囲まれて距離も長く、しばしば被害が発生している。西日本を中心に大きな被害をもたらした2018年7月の豪雨では、はがね山送信所への道路(市道)及び送信所敷地の南側法面が、図5に示すように損壊した。この南側法面の真下には登山道があるため、市役所に通行回避を要請して、被害拡大を防ぐ応急工事を速やかに行った。また、おおたかどや山送信所でも2016年8月の台風7号及び8号の影響で、敷地内の管理道路の砕石が流失し、補修工事を行った。一方で両送信所とも冬期には降雪が多く、毎年除雪作業が欠かせない。九州のはがね山送信所であっても雪道走行できる自動車が必要になる。また送信所局舎の真上をかぶさるように大型アンテナが設置されているため、アンテナに付いた雪が氷塊となって局舎周辺に落ちてくる。大きく重い氷塊もあり、落氷による被害の例として車両、監視カメラ、気象観測器などの破壊がある。落氷の可能性がある場合はアンテナ鉄塔の目視確認、通行の制限、ヘルメットの着用など安全対策を徹底している。はがね山送信所では車両や監視員の安全確保から、屋根付きガレージ及び通路を2012年に設置した。3.5送信設備の更新おおたかどや山標準電波送信所が1999年に、はがね山標準電波送信所が2001年に開局して共に10年以上が過ぎた頃、送信機や整合器の老朽化が問題となった。使用する一部の部品には再入手困難な物も出てきた。一方で、国内生産の電波時計の推定販売台数が累計約1億台を超えて、標準電波の安定運用を維持する図4 2014年から2018年の各送信所への落雷の電流強度分布(月期間別)333-3 長波帯標準電波送信所の運用
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