ために送信設備の更新を行った。更新工事の計画を2011年から検討して、おおたかどや山送信所から開始しようとしたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災と原子力発電所事故の影響で延期となった。そこで、はがね山送信所の工事を2013年から先行させた。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故による、おおたかどや山送信所の連続停波の社会的影響が極めて大きかったことから、工事では連続停波をできる限り短くする検討がなされた。その結果、既設設備を使って送信を続けつつ、局舎増築を行って、そこに新しい送信設備を設置することとした。これにより工期は長くなるものの、夜間は必ず電波送信できることから、連続停波を最短時間にでき、利用者の利便性を保てた。はがね山送信所の局舎増築工事では、予想以上に多くの大きな岩石が地下に埋まっていたこと、冬期に例年以上に積雪があったことから工事期間が延長されたが、2015年6月に増築を完了して、2016年1月8日から新設の設備による標準電波発射を開始した。おおたかどや山送信所の更新についても、原子力発電所事故の避難指示の解除により2015年から工事を開始したが、両送信所の工事期間が一部重なったため、2つの両送信所の同時停波を避ける調整に困難を極めた。おおたかどや山送信所の増築工事は2015年11月に完了し、翌年3月31日から両送信所で共に新規送信設備による標準電波の発射を実施した。完成したおおたかどや送信所の新規設備と増築局舎の写真を図6に示す。標準電波送信業務の実績と利用状況標準電波送信所の運用の実績として、送信信号の精度と年間の送信時間が挙げられる。これらは毎年の報告書に記載されて、標準電波の発射に関すること[8]を所掌とする総務省に提出されている。また電波時計の普及など標準電波の利用状況については、近年特に正式調査を行っていないが、標準電波に関する関連団体の資料や要望、問い合わせ状況から筆者らが把握している範囲を概説する。4図5 はがね山送信所付近での台風被害(2018年7月豪雨 6月28日~7月8日)(左:「白糸の滝」山側の市道 右:送信所敷地内の南側法面)図6 おおたかどや山送信所の新規設備と増築局舎(左から送信機、整合器、局舎外観)34 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム
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