まえがき令和元年版情報通信白書[1]によれば、2018年時点でスマートフォンとパソコンの世帯普及率はそれぞれ79.2%、74.0%に、またモバイル端末全体では95.7%に達しており、ほとんどの世帯が何らかの形でインターネットを利用しており、インターネットが重要な社会インフラとなっている。インターネットには様々な機器が接続されデータ通信を行っているが、この通信が正常に行われるためには機器に内蔵される時計が常に正しい時刻に同期していることが重要である。NICTはインターネット上で正しい通信を支えるためにインターネットに正確で信頼できる時刻を供給しており、これはインターネット上で提供されている様々なサービスの信頼性や安全性を支える機能のひとつとして利用されている。ここでは、NICTがインターネット社会に向けて提供するネットワークによる時刻情報提供(NTP)サービス及びタイムビジネス時刻情報提供サービスの最新状況を紹介する。なお、NICTは標準電波[2]や電話回線を利用した日本標準時の供給サービス[3]、並びに周波数標準器の較正サービス[4]も提供しているが、これらについては他の章で詳しく解説しているので、そちらを参照いただきたい。ネットワークによる時刻情報提供(NTP)サービス2.1現状NTP(Network Time Protocol)はネットワークに接続される機器が内蔵する時計を正しい時刻に同期するための通信プロトコルで、階層構造を用いてネットワークに接続された各機器の時刻同期を行う。NICTの原子時計群が実現するUTC(NICT)は、階層構造(stratum 1から15)の最上位(stratum 1)に位置するものであり、UTC(NICT)に接続されたインターネット用時刻同期サーバを使ってインターネットに正確で信頼できる時刻情報を提供するサービスを行っている。このサービスには以下に述べるような特定事業者を対象にした専用線NTPと誰でも利用できる公開NTPがある。NICTでは、2005年から、公共機関、インターネット関連事業者、タイムビジネス認定の時刻配信事業者等の法人を対象とした「ネットワークによる時刻情報提供サービス」(専用線NTP)[5]を行っている。このサービスは、利用者が専用線等を用いてNICT内のNTP専用サーバに直接接続して時刻同期を行うものであり、利用者はNICTから供給された時刻を基にして、NTPの階層構造で2番目の時刻情報提供者(stratum 2)としてインターネットへの時刻供給や、公共性の高いネットワークへの時刻供給などを行って12我が国のモバイル端末全体の世帯普及率は2018年時点で95.7%に達し、国民のほとんどが何らかの形でインターネットを利用しており、インターネットは重要な社会インフラとなっている。インターネットには様々な機器が接続されデータ通信を行っており、通信を行うにはこれらの機器の内蔵時計が正しい時刻に同期している必要がある。本稿では、インターネット社会に向けて情報通信研究機構(NICT)が提供している日本標準時供給サービスの最新状況を紹介する。In Japan, 95.7 percent of households are using mobile Internet in 2018, which means that the Internet has become one of the most important social infrastructures. For the data communica-tions among the devices connected with the Internet, the clocks of these devices are desired to be synchronized correctly. This paper presents the latest state of the standard time services for the Internet society provided by NICT.3-4 インターネット社会の標準時供給3-4Standard Time Services for the Internet Society齊藤春夫 岩間 司 今村國康 小竹 昇 碓氷ひろみ 成田秀樹Haruo SAITO, Tsukasa IWAMA, Kuniyasu IMAMURA, Noboru KOTAKE, Hiromi USUI, and Hideki NARITA393 ⽇本標準時システム
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