る必要があったが、残念ながらアクセスデータ蓄積用のコンピュータが故障しており、当時のデータを基に解析することができなかった。そのため、図1に見られる一時的にアクセス数が減少した2019年4月8日の0時(JST)のデータと通常のアクセスと考えられる翌日の同時刻(9日の0時(JST))のデータの比較を通して、増加の原因を検討した。なお、解析には、アクセス数が、非常に多いため1時間全体のデータではなく、0時1分から2分の60秒間のデータをサンプル抽出したものを使用した。また、0時0分からのデータをサンプルとして使用しなかったのは、0時0分から1分の間に特定のアドレスから膨大なアクセスがあったためである。表1は、その比較結果(B系のみ)であり、4月8日のアクセス数上位10か国のアクセス数が、4月9日にどのように変化しているかを記載しており、左から国名、4月8日のアクセス数(60秒間)、4月9日のアクセス数(60秒間)と4月8日のアクセス数に対する倍率を示している。アクセス数が減少した状態(8日の状態)と通常の状態(9日の状態)を比較すると、国外からのアクセス数が大幅に増加していることが分かる。特に、中国、インド及び南米(ブラジル、メキシコ)からのアクセス数が増加している。2018年7月からアクセス数が増加した理由は、その前後のデータが取得できなかったため正確な解を得られないが、表1の結果のように、増加しているのは国外からのアクセスがほとんどであると考えられる。また図1にあるように2018年7月以降、アクセス数が減少している時期が不定期に発生しているが、アクセス増減時に各国のユーザが一斉にNTPサーバの設定を変更しているとは考えにくいことから、NTPの参照先をホスト名ntp.nict.jp(若しくは固定アドレス)として指定しているのではなく、ntp.orgが提供しているpool.ntp.org[8]として設定しているようである。そして、pool.ntp.orgから公開NTPのアドレスが外されると、アクセス数が減少するというようなことが考えられる。このpool.ntp.orgは、NTPサーバの仮想クラスタで、安定したNTPサービスを提供するために有志により作成されたプロジェクトである。PC等のNTPの参照先に全世界(pool.ntp.org)、各大陸(asia.pool.ntp.orgなど)、各国(jp.pool.ntp.orgなど)のホスト名を指定することにより、指定した地域のプロジェクトに登録された複数のNTPサーバを利用することが可能となる。なお、各ホスト名に登録されるNTPサーバは、1時間ごとに変更されている。図2は、ネットワーク回線の不具合により、2019年7月9日の5時57分から9時39分(それぞれJST)の間、A系の回線が切断されたときのアクセス数の推移である。A系のアクセス数(緑色)は、回線の不具合が解消した直後にはほぼ一定の状態を保っていたが、19時(JST)ごろから増加し始め、翌10日の0時(JST)ごろに完全に元の状況に回復している。一方、図3は、ntp.orgが公表しているA系のNTPサーバのスコア(各サーバの評価値)の推移である。ntp.org表1 アクセス減少時の国別アクセス数の比較(60秒間データ)国名 アクセス数(4/8)アクセス数(4/9)倍率 JP(日本) 172,656 197,504 1.1 CN(中国) 146,754 1,110,749 7.6 US(アメリカ) 32,773 74,102 2.3 ID(インドネシア) 22,506 35,327 1.6 RU(ロシア連邦) 20,637 41,808 2.0 IN(インド) 20,143 115,849 5.6 BR(ブラジル) 12,435 56,937 4.6 MX(メキシコ) 11,409 39,354 3.4 LB(レバノン) 10,643 21,917 2.1 IL(イスラエル) 9,867 21,768 2.2 図2 公開NTPへのアクセス数の推移413-4 インターネット社会の標準時供給
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