では、各NTPサーバのスコアが10以上でないと、pool.ntp.orgに登録しないが、A系のNTPサーバのスコアが10を超えるのは、19時(JST)ごろからであり、図2のアクセス数の回復と一致している。このことからも、公開NTP利用の多くがホスト名ntp.nict.jp(若しくは固定アドレス)として指定しているのではないことが推察される。図2の回線不具合が解消した直後の状態が、NICTの公開NTPをホスト名ntp.nict.jp(若しくは固定アドレス)として指定して利用しているアクセス数と考えられ、この値は1系統1秒当たり10 000アクセス程度であるので、1日当たりの総アクセス数は20億弱になり、pool.ntp.orgへ登録されなければ、NTPへのアクセスによるNICTのネットワーク回線の圧迫が減り、他の通信への影響は少なくなると考えられる。2.4http/httpsによる時刻供給サービスNICTでは、上記NTPのほかに、ネットワークを利用した時刻情報提供として、http/httpsによる時刻供給サービス[9]を行っている。http/httpsによる時刻供給サービスは、2000年代前半に当時の電磁波計測部門タイムアプリケーショングループにおいて、NTPによる時刻供給がファイアウォール等の制限により利用できないような場合に、正確な時刻を端末等へ供給するためのツールとして研究開発されたもので、2007年から試行的な公開を行っている。公開当初は、電磁波計測部門タイムアプリケーショングループが管理する物理サーバから供給していたが、2016年の12月からは、NICTが運用するwebサーバ内の仮想サーバからの供給に移行している。http/httpsによる時刻供給サービスへのアクセスは、2018年夏ごろから急増しており、webサーバの他のサービスへ影響を与え始め、2019年1月にはアクセス数がwebサーバの許容値を超えたため、http/httpsによる時刻供給サービスを一時的に停止したこともあった。このアクセス数の増加は、スマートフォン等の端末からのアクセスによるものと考えられ、大量のアクセスが判明した利用者にはアクセスを停止するように要請するなどの対策をしてきているが、利用元が判明しないものがほとんどであるため、有効な対策が取れない状況となっている。このサービスは、NICTの共用設備のリソースを用いており、アクセス数の増加が他のサービスに影響を与えていること、専用設備としてのサーバ等の増強は、一部サービスへの対応のためだけに多大な費用が必要になり不合理であること、などから近い将来サービスを終了することを検討している。なお、サービス終了に当たっては、NICTのお知らせ等で利用者へ周知するとともに、利用者(一般的なエンドユーザではなく、アプリ等開発事業者等)自身が、独自にサービスを継続できるようにするため、http/httpsによる時刻供給サービス用のサンプルプログラムを公開する予定である。タイムビジネス時刻情報提供サービス3.1これまでの状況インターネットでは様々な電子データや電子文書などの電子情報がやり取りされているが、正確で信頼できる時刻情報と暗号技術を用いてこれらの電子情報の安全性と信頼性を保証するのがタイムビジネスである。日本のタイムビジネスは、2002年6月に設立された「タイムビジネス推進協議会」による実用化の検討から始まり、2005年2月に財団法人日本データ通信協会タイムビジネス認定センターの運用する「タイムビジネス信頼・安心認定制度」[10]の設立に伴い事業化が開始され、2005年4月から施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通称「e–文書法」)で規定された電子文書の利用に関する要求に対応することが可能となっている。さらに2006年7月には「タイムビジネス協議会」が設置され、事業化を推進してきた。2018年6月には、「トラストサービス推進フォーラム」[11]が、タイムビジネス協議会を発展的に改組し設立された。同フォーラムは、信頼できるサービス(トラストサービス)の在り方と、ユーザが安心・信頼してサービスを選択できる仕組みを検討し、それを実現する環境整備を推進することを目的としており、設立時に37であった会員数が、1年後の2019年6月には53に拡大しており、国内のタイムビジネス事業は、ようやく大きな進展が見られ、国立印刷局における官報情報等公的機関における利用、国税関係書類のスキャナ保存における利用、電子契約・入札等の電子取3図3 スコアの推移:ntp.orgからの引用(スコア値は右軸)42 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム
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