用いて1 ms以内の時刻同期を実現できるシステムとして、放送局をはじめ、金融関係等も含めた多様な所で利用されてきている。テレホンJJYの利用は公開しており、利用にはアカウントIDが必要であるが、公開IDまたは登録IDいずれの形態でも利用可能である。利用されている実績(図2)としては、月間アクセス数17万件強(2019年5月実績)であり、そのうち登録IDによるアクセス数は2,500件ほどであるため、多くの利用は公開ID(不特定)利用者である。そのため、登録ID以外の利用者における利用の用途は、うかがい知ることのできない範囲である。一方、登録ID利用者は主として放送局等であり、マスタクロック同期に用いられていると推定される。ただし、電話は発信者を特定していないので、その利用の詳細は不明である。2.2テレホンJJYの問題点電話回線を利用した時刻比較の手法は、1980年代に音響カップラとタイムインターバルカウンタによる国内実験[1]が行われ、±200 μsの精度で得られている。サービス開始当初まで電話回線としてはアナログの交換接続網が想定されており、1 msの精度は十分確保されていたが、その後のいろいろな電話回線網の接続により、その形態によっては期待する精度が得られない事象が見受けられるようになってきている。また、サービス開始から30年以上の年月がたち、アナログ公衆回線網接続に使うモデム装置は国内では既に製造されなくなってしまっている。使用するモデムは時刻供給の精度に影響するため、ホストシステムで使用しているモデムを他のモデムに安易に代替することはできず、設備の維持にも支障となる状況となってきている。使用するモデムの違いによる時刻同期の確かさについては、既に報告[2]しているとおり、1 msを逸脱するものが存在する。また、使用する電話回線についても、アナログ公衆回線以外のデジタルによるISDN(Integrated Services Digital Network)回線(ターミナルアダプタによるアナログ変換)を使用したものや、IP(Internet Protocol)電話回線(アダプタによるアナログ変換)といった回線からもテレホンJJYシステムへの接続は可能であるため、利用者の意図した時刻同期の確かさが得られない可能性がある。図3は使用した電話回線の違いによる、往復遅延量を計測した結果である。電話回線としてはアナログ公衆回線、INS回線*1(Information Network System)、IP電話回線*2の組合せで計測したもので、結果は一例であるが、特にIP電話回線を使った接続では接続の途中で遅延時間が大きく(約10 ms程度)変化する場合がある。テレホンJJYの同期は、その原理から伝送路遅延時間が一定、かつ、往路、復路の遅延時間が同じであることが必要である。遅延時間の変化や往路、復路での違いが生じると時刻同期の確かさの劣化につながる。表1はIP電話回線を除いたアナログ回線、INS回線及びNICTの内線電話回線(デジタル収容回線交換機)を利用した場合の、往路遅延、復路遅延の計測結図2 テレホンJJY利用度月別変化図3 回線往復時間の時間変化(秒)INS→内線接続0.034448内線→INS接続0.033133INS→内線接続(2回目)0.031674内線→INS接続(2回目)0.033456平均0.033061平均0.033295往復の差-0.000234アナログ→アナログ接続0.024104アナログ→アナログ接続0.024021アナログ→アナログ接続(2回目)0.024129アナログ→アナログ接続(2回目)0.024005平均0.024116平均0.024013往復の差0.000103INS→アナログ接続0.056213アナログ→INS接続0.044535INS→アナログ接続(2回目)0.055404アナログ→INS接続(2回目)0.044669平均0.055809平均0.044602往復の差0.011206値は遅延時間(秒)表1 往路と復路の遅延差(非IP接続)*1NTTによるISDN回線サービス*2ここでは、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line、非対称デジタル加入者線)によるIP電話を使用46 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム
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