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果とその差を示したものである。使用した回線はNICT本部同一拠点のもので、そこからの計測であるので、交換局折り返しでの経路と考えられる。この計測結果からは、同一の回線(アナログ回線どうし、INS回線どうし)であれば、往路と復路の遅延差は1 msより十分小さく、同期確度に与える影響は少ない。異なる回線(アナログ回線とINS回線)では、往路と復路の遅延差が10 msを超えており、この値の1/2である5 ms以上の同期確度劣化につながることが明らかとなった。以上のとおり、現行のテレホンJJYでは利用者側において使用するモデム、電話回線によってはそれだけで同期確度が十分に得られないケースが存在するが、利用者においてその状況を判断することは通常できないため、1 msの同期確度を期待しながら、意図しない時刻の状態で利用しているケースが想定される。2.3NGNへの移行NTT等によるPSTN(Public Switched Telephone Networks :公衆交換電話網)マイグレーションが進められており、テレホンJJYが利用している従来のアナログ電話回線は無くなりIP網へと切り替わりつつある。NGNでは、IP網を使用してPSTNからIP電話へ移行される。NTTの2017年の計画では、加入者交換機設備が2025年頃に維持の限界を迎えるため、2021年からPSTNからIP網接続へ移行するとスケジュールを示した[3]。利用者側電話回線またはテレホンJJYシステム側電話回線が従来のアナログ回線接続であっても、マイグレーションにより接続形態は変更されることとなる。変更が行われることとなっても、アナログ-デジタル変換で、電話接続としてのサービスはそのまま継続される。アナログ-デジタル変換自体はNTT内で行われるため、利用者は従来と同様に(インターフェイスとしてはアナログ回線として)利用できるが、通信路上で見るとアナログ–IP網–アナログと複数回の変換を経て接続されることになる。さらに、NTT以外の他事業者との接続もIPで行われ、移行の途中では発着の経路が異なることも想定される。このような回線における遅延時間の変化を評価することは、なかなか難しい。時刻同期の上で回線遅延の評価が重要であることは、既に述べているところであり、アナログ回線がNGNへ移行することによる影響の把握は今後更に調査を進めていく必要があると考えられる。光電話回線による新たな手法3.1新方式の開発経緯前項のとおり、NTTは公衆回線網をNGNに移行する計画である。さらに、現行のアナログ回線を使うテレホンJJY方式(以下、従来型テレホンJJYという。)は、モデムの問題、回線の問題、設備維持保守の問題等があることから、NICTでは新しい時刻供給の方式について開発を進めてきた。NTTは2010年に「PSTNのマイグレーションについて」を報道発表[4]し、PSTNからIP網への切替を示した。NICTでは、同時期にはテレホンJJYの同期確度の問題について把握し、次世代型のテレホンJJY開発の必要性について言及[2]した。しかしながら、開発にかけるリソースも十分ではない中、NGN網である光電話回線を利用した時刻同期は従来型テレホンJJYの代替となり得るのかということから調査を進めていくこととなった。3.2NGN回線とデータコネクト従来型テレホンJJYの利用者は、①時刻同期の確かさへの要求は1 ms程度、②電波時計等の受信不安定要素のない環境またはアンテナを立てられない環境、③インターネットなどは利用したくないセキュア環境、④必要なときだけ接続する従量型、⑤必要とする情報は日本標準時または日本標準時にトレーサブルな時系、のいずれかまたは複数を要求していると考えられる。この点からも、電話回線を使う時刻同期法のサービス継続は意義のあるものと考える。したがって、従来型テレホンJJYと同等以上のサービスが可能となる手法が必要となる。NTTのPSTNマイグレーション発表同年の2010年5月には、NTTはNGN網であるフレッツ網による「ひかり電話」サービスに、電話番号を利用した帯域確保型のデータ通信サービス「データコネクト」を提供すると公表[5]した。このデータコネクトは常時接続とは異なり、電話番号を用いたセキュアかつ帯域確保されたデータ通信を可能とするものである。この点はインターネット接続のような形態とは大きく異なる点である。データコネクトの特長としてNTTが掲げている内容は、①簡易な操作でセキュアな通信、②帯域確保による安定したデータ通信、③データ通信に適した短時間課金、である。従来型テレホンJJYと同様に電話番号で1対1での通信が可能で、課金については従来の通話料に比べて低廉化できるので、この点は利用者にメリットが生じる内容である。「安定したデータ通信」が可能か否かは、実際に時刻同期に活用できるの3473-5 光テレホンJJY

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