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か評価してみないと分からないところであり、実験によるデータ取得を試みた。3.3データコネクトによる時刻同期実験NTTのフレッツ(光回線)に関しては、NICTにおいては既に拠点間(NICT本部–標準電波送信所)のネットワーク接続で利用していたため、ひかり電話サービスの追加による、既存の回線設備を利用した評価実験から始めることとした。また、時刻同期の確かさ計測には、NICTが開発したNTP stratum1サーバ[6]を利用することで、1μs分解能での計測を可能とした。実験のシステム構成を図4に示す。拠点間をNGN網のデータコネクトで接続し、ルータのトンネル接続機能で相互のNTPサーバを接続した。NTPサーバにはそれそれ拠点の基準時刻信号(NICT本部ではUTC(NICT)、標準電波送信所においては送信所の原子時計でつくられた基準時刻信号)を使用した。相互の基準時刻信号の差は数十ナノ秒以内で維持されているので、実験でのミリ秒計測には全く影響しないといえる。計測はNTPのパケットタイムスタンプを使用して時刻差から時刻伝送の確かさを求めた。1回の接続において10個のNTPパケットを送出し、計測を行った。図5はその実験結果で、本部–本部間、本部–はがね山標準電波送信所間の計測結果を示す。実験結果より、以下の結果が得られた。①各回接続のパケット平均値は200 μs以内の確かさが得られた。②各回接続の各パケットによる計測時刻のばらつきは、95%値で約400 μsが得られた。③本部–本部間(回線の遅延時間1.5 ms程度)、本部–はがね山標準電波送信所間(同13 ms程度)でも得られた時刻の確かさは同等であった。以上のことから、目標とするミリ秒以下での時刻同期の確かさは十分達成可能と判断された。なお、データコネクトの最小課金単位である接続時間(30秒)には十分余裕があるので、より多くのパケットを使い平均化処理をすることで確かさの向上を図ることが可能と考えられる。3.4 共同研究とシステムデザインデータコネクト回線の評価実験により、時刻同期システムへの利用が可能と判断されたため、実用化に向けたシステムのデザイン、通信プロトコルの決定や実証実験装置による検証を進めることとした。予算確保のため機構内のインセンティブ調査研究制度を利用して実証実験装置の費用を捻出するとともに、クライアント装置の開発のために共同研究の相手先を求めた。その結果、セイコーソリューションズ株式会社がその相手先となり、2014年から2017年3月末まで共同研究を実施した。時刻同期の確かさの検証に関しては、拠点数を増やして再検証を行った。表2は5箇所の拠点を使っての計測結果である。いずれの地点においても200 μs以内での確かさで計測が行えていることを確認[7]した。また、その値と拠点間の距離相関は見受けられなかった。使用する通信プロトコルとしては、汎用性のある図4 実験システムの構成図5 実験結果NGN網UTC(NICT)UTC(NICT)本部UTC(JJY60)はがね⼭標準電波送信所NTPサーバNTPサーバradiusサーバlogサーバルータ(RTX1200)ルータ(RTX1200)クライアント(ユーザ)側サーバ(ホスト)側IPUDPトンネル接続SIP(Session Initiation Protocol)接続本部または200μs200μs48   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム

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