2.2遠隔校正システム主な遠隔校正の機器は時刻比較用GPS受信機(受信用アンテナ含む)と遠隔校正用計算機から構成される。図4に、校正室の遠隔校正システム(周波数・時刻差)の機器の配置図を示す。遠隔校正の設備は、周波数校正と時刻差校正とも共通である。校正室前室内は、温度23℃±5℃、湿度50%±10%、電源電圧AC100V±5Vに保たれている。使用しているGPS受信機は、これまではJRC製であったが、既に製造中止及びサポート不可であり、令和元年8月4日に発生するロールオーバー不具合があることから、平成30年6月1日にE3デザイン社製の受信機への切替えを行った。なお、遠隔校正可能範囲は、NICTから遠隔の顧客側DUTの設置場所までの距離が半径1000km以内を条件としており、この顧客側にも時刻比較用GPS受信機(受信用アンテナ含む)とデータ取得及び転送のための計算機が設置管理されている。2.2.1 遠隔時刻差校正遠隔時刻差校正の方法は、GPS衛星を用いたコモンビュー法[10]を使用する。基準局側のGPS受信機の1秒信号入力には、UTC(NICT)の1秒信号を入力する。顧客側においては、DUT(被測定の原子時計)の1秒信号をGPS受信機の1秒信号入力端に接続し、基準局側と顧客側とで同じGPS衛星のGGTTSデータのREF-GPSの差を計算(GPSコモンビュー)し、測定期間で平均することにより時刻差校正の結果が得られる。GPSコモンビュー法に基づいた1日の測定データ(712:8GPS衛星×89セッション JRC製GPS受信機仕様である20日間以上の測定データ蓄積量の条件で規定)を用いて、測定時刻(測定期間の中点)における時刻差を1日の平均として求める。UTC(NICT)との時刻差測定のCMCは40nsである。また、UTCとの時刻差測定(予測)とUTCとの時刻差測定(後処理)のそれぞれのCMCは、70nsと50nsである。2.1.2持込み時刻差校正と同様に、時刻差測定(予測)には、UTC-UTC(NICT)のリンク不確かさ及びBIPMの月例報告Circular T[9]公表前から最大1か月前に予測計算するために発生するUTC(NICT)の推定不確かさが含まれる。また、時刻差測定(後処理)には、UTC-UTC(NICT)のリンク不確かさが含まれる。2.2.2 遠隔周波数校正遠隔周波数校正方法は、前記と同様、GPS衛星を用いたコモンビュー法[10]を使用する。DUT(被測定の周波数標準器)側の入力信号は10MHzとし、GPS時刻差データ(DUT側と基準側のGGTTSデータのREF-GPSの差)において、UTC0時の最初の時刻差と翌UTC0時直前の時刻差の傾きを周波数偏差(平均時間1日の代表値)とし、この代表値を1か月間平均した傾きが周波数偏差となる。遠隔周波数校正のCMCは5×10-13である。顧客との契約は1年間とし、毎月証明書を発行している。遠隔周波数校正の顧客との契約条件等は、NICT Webサイトの較正サービス[7]の確認チェックシート(遠隔周波数校正)を参照いただきたい。拡張不確かさ値と校正測定能力(CMC)時刻差と周波数の拡張不確かさ値は、毎年BIPM のCircular T[9]のデータで再計算し、CMCに適合しているか否かを確認している。表2に、Circular Tの平成30年のデータを利用して計算した拡張不確かさ値を示す。※の校正は、校正証明書発行の実績がある項目である。また、( )内の数値は、ASNITE認定証のCMCを記述している。表2の拡張不確かさ値とCMC値を比較した結果、全てのCMC値を超える拡張不確かさ値はなかった。よって、NICTの校正の不確かさ算出では適合性が確認された。平成23年3月の海外審査員によるレビュー後のBIPMの基幹比較データベース(KCDB:Key com-3図4 遠隔校正システム 機器の配置図(屋上にGPSアンテナ設置)アプリケーションサーバーUPS温湿度記録器温湿度記録器ハブモニター&切換え機データサーバー制御PC制御PCGPS受信機2GPS受信機1GPS受信機3GPS受信機456 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)3 ⽇本標準時システム
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