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スフリーな連続運転が可能となっている。図3に以前のデュワー型冷却サファイア共振器と現在の冷凍機型冷却サファイア共振器の写真を示す。2.3.2周波数基準伝送と周波数コンバーター冷凍機型冷却サファイア共振器により、位相トビなどなしで連続的に超高安定な参照信号が発振できるようになったが、冷凍機自身の音響ノイズが高精度な原子周波数標準に影響を及ぼす可能性があるため、冷凍機型冷却サファイア共振器は、原子泉型標準器や光周波数標準の開発場所から物理的に離れた場所で運用している。冷却サファイア共振器から発せられるマイクロ波信号(11.2GHz)のみを光ファイバー経由で高精度実験室の方に伝送し、その伝送された信号を基準にCsF1とCsF2においてラムゼー共鳴を引き起こす9.193GHzマイクロ波を生成している。信号伝送の方法を具体的に述べると、1.5μm光通信帯のシングルモードレーザーの出力光を、マッハツェンダー変調器を介して11.2GHz信号で強度変調をかけ、実験部屋間に敷設された120mの光ファイバー経由で伝送し、伝送先では変調された光を高速フォトディテクターで検出し、11.2GHzのマイクロ波信号を取り出している。ここでの懸念は、マッハツェンダー変調器、120m光ファイバー、高速フォトディテクターを仲介することで、冷却サファイア共振器の信号の精度が劣化しないか、という点である。その影響を評価したのが図4である。まずは光ファイバーの影響を除くため、マッハツェンダー変調器を用いて光に信号情報を乗せた後、高速フォトディテクターでマイクロ信号として取り出した時の精度劣化を評価した。それは図4の青線で示されており、平均化時間数秒で安定度は冷却サファイア共振器自体の短期安定度と同等であることに加え、原子泉型周波数標準器の典型的な周波数安定度よりも1桁以上良いため問題にならない。次に、120m光ファイバーの影響を調べるために、240mのRound-trip光ファイバーを加えて評価したものが図4の赤線である。温度や振動などに起因するファイバー長の伸び縮みによって長期安定性が少し劣化するが、その大きさは冷却サファイア共振器の長期周波数ドリフトよりも小さい。後述するように1GHz Down-converter内部で冷却サファイア共振器の長期周波数ドリフトを取り除く制御がかけられるので、光ファイバリンクによる周波数変化の影響は無視できる。光ファイバー経由で伝送された冷却サファイア共振器の11.2GHz信号は、1GHz Down-converterで冷却サファイア共振器の短期安定度を維持したまま1GHz信号に変換される。この1GHz信号と水素メーザーからの信号を周波数比較し1GHz信号の長期周波数図3 デュワー型から冷凍機型へ変更図4 CryoCSO信号伝送の際のEO-OE変換と光ファイバーの影響10010110210310410510-1710-1610-1510-14H-maserSRAVAveraging Time (sec) EO-240mFiber-OE+11.2->1GHz D/C EO-OE+11.2->1GHz D/CCryoCSO(11.2GHz)714-2 原子泉型一次周波数標準器 NICT-CsF1 & NICT-CsF2

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