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tent評価法では、デッドタイム不確かさを考慮して仲介周波数標準の平均周波数を評価するが、測定回数が多くなれば、それだけ連続運転に近付き、デッドタイム不確かさが小さくなるため、より正確に仲介周波数標準の周波数を評価できるのは明らかである。しかしながら、TAIへの衛星リンク不確かさ相当の評価ができれば、それ以上運用時間及び頻度を増やして仲介周波数標準の周波数の見積もり不確かさを小さくしても効果は小さい。そこで、Intermittent評価法では、効率的に衛星リンクの不確かさ相当で仲介周波数標準の周波数を評価することを考える。図3(b)では仲介周波数標準LTO (Local Transfer Oscillator, 規格化周波数偏差 )として水素メーザーを考える。NICTの日本標準時システムでは常時UTC(NICT)と水素メーザーの位相差をDMTDシステム[20]によって測定しているため、面積Bは(1)式と同様にして求められる。UTC(NICT)は時々UTCに合わせる調整を入れるため、水素メーザーよりもこの時間スケールで周波数変動が大きい。そこで仲介周波数標準に水素メーザーを使うと、デッドタイム不確かさを抑制でき、より正確に仲介周波数を評価することができる。同じ回数の間欠運転でも、図3(b)のように適切な仲介周波数標準を採用し、光周波数標準の運用間隔を等間隔に設計することでデッドタイム不確かさを抑制することができる[18][21]。Intermittent評価法によるTAIを利用した絶対周波数測定        ここではIntermittent評価法を用いてTAIの歩度であるTAI秒を利用した絶対周波数測定について紹介する[2]。この手法では、光周波数標準を仲介周波数標準で評価し、衛星リンクを介して仲介周波数標準をTAI秒で評価することで、TAI秒に基づいて光周波数標準を評価する。ここで注意が必要なのはTAI秒がSI秒からずれ得ることである。一次及び二次周波数標準は定常的にTAI秒を評価しており、評価した翌月に前月のTAI秒のSI秒からのずれが分かる。そのため、光周波数標準を評価した期間のTAI秒のずれを後で補正して、SI秒に基づく絶対周波数を決定する。これを式で示すと、下記のとおりである。(Sr)(SI)=(Sr)()()(())(())(I)(I)(SI) (2)ここで、(Sr) , , , , (SI) はそれぞれNICT-Sr1とLTO, UTC(k), TAI秒, SI秒の規格化周波数偏差を表している。2016年に実施したTAIを利用した絶対周波数測定の手順を示す。(1) Circular Tが報告する日程(MJDの下一桁が4と9日)を参考に、NICT-Sr1を評価する10(5×2)日間を決める。この間の時刻差UTC−UTC(k)から平均周波数比(())() を求める(UTCとTAIの歩度は同じであることに注意)。(2) Intermittent評価法でNICT-Sr1と水素メーザーのこの期間の平均周波数比 を測定する。NICT-Sr1による水素メーザーの評価系を図4に示す。NICT-Sr1から生成する光標準周波数429THzにEr添加光ファイバコム(Erコム)を位相同期する。このときのNICT-Sr1の周波数は2015年に測定した絶対周波数429 228 004 229 872.97Hz [22]と設定した。Erコムを使ってNICT-Sr1の標準周波数を100MHzに下方変換(ダウンコンバート)し、これと水素メーザー100MHzの位相差を測定する。図5に示すように、NICTの水素メーザーは10 000s(~3時間)で16桁に到達する安定度があり、NICT-Sr1の安定度はそれに比べて十分高いので、3時間程度で16桁の精度で評価ができる。この評価を10日間毎日行った。その結果を図6に示す。縦軸はNICT-Sr1を基準にした水素メーザーの規格化周波数偏差、横軸は評価期間である。このプロットを一次フィッティングして10日間のNICT-Sr1と水素メーザーの平均周波数比 を求める。 ここで考慮する不確かさは、フィッティングエラーに相当する統計不確かさとデッドタイム不確かさである。水素メーザーの周波数ノイズはフリッカー周波数ノイズ が大きな寄与をしている。このような場合のデッドタイム不確かさは、NICT-Sr1を運用していない時間を とすると、/√ln2 で見積もることができる[23]。詳細は[2]に記載されているが、40505AAB(a)(b)時間(day)時間(day)規格化周波数偏差規格化周波数偏差11SrUTC()TAISrUTC()TAILTO図3 5日間のIntermittent評価方法(a)5日間に光周波数標準で仲介周波数標準のUTC(k)を3回評価した場合。このとき測定間隔は考慮していない。(b)5日間に光周波数標準で仲介周波数標準の水素メーザーを5回評価した場合。評価期間にわたって等間隔に評価すること、仲介周波数標準に安定度の高いものを利用することで、より効率よく正確な周波数測定を実現している。834-3 NICTにおけるストロンチウム光格子時計の開発

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