HTML5 Webook
49/72

シナプトタグミン4[2]、シナプトタグミン7(発表準備中)などの突然変異体からシナプス電流を記録し、様々なシナプスタンパク質の機能を調べた。これらの主要な分子を欠損する突然変異体の多くは致死となるので、卵の中の個体から電気記録してこそ、このような解析は可能となる。例えば、一般的な細胞内小胞移動の分子基盤であると考えられている“SNARE”タンパク質であるシナプトブレビンが欠損していると、活動電位に誘発される伝達物質の放出が完全に欠損するが、活動電位と同期せずに自発的に起こるシナプス小胞の放出(活動電位に誘起される放出のように多数の小胞の一斉放出でなく、シナプス小胞一個一個の放出は記録されるポスト側に筋肉細胞に流入する電流のサイズが小さいため、それを電気的に記録したものは、“微小シナプス電位(電流)”と呼ばれる)は観察される。よって、活動電位が伝達物質を放出させるその過程においてシナプトブレビンが働いていることが推測される。一方、シナプトタグミン1は、進化的にデフォルトで存在する遅い放出を活動電位に同期した素早いものにする、という事実を著者らが発見し[5][6]、その発見は、その後、Sudhof博士(2013年ノーベル賞)の研究室をはじめ多くの研究室で哺乳類でも追試・確認された[7]。シナプトタグミン1は動物でのみ進化した分子であるので、運動時の早いスピードのために素早いシナプス伝達を行うために進化した分子、ということができる[8][9]。このように、著者らがショウジョウバエで明らかにしてきた分子機能は哺乳類を使った研究に洞察を与えてきた。図2 微小シナプス電流頻度の劇的な変化cAMPの濃度をforskolin投与によって薬理学的に上昇させると、突然数百倍の頻度の微小シナプス電流が観察された[4]。図3 “高頻度刺激誘発微小シナプス電流放出(High Frequency stimulation-induced Miniature Release=HFMR)”[2]453-1 脳の知を生み出す生物現象の知に学ぶ

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る