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果が入射角30°から40°において、消光比を減少させ、その大きさに影響を与える。スペクトル形状の特徴を明示するために、図 21(c)に入射角5°, 15°, 45°, 50°そして60°における消光比スペクトルを示す。入射角が45°よりも小さい場合には、メインピークの線幅はあまり変化しない。入射角が50°のとき、メインピークの線幅が減少しており、波長260 nm近傍にブローなピークが存在していることが分かる。線幅の太いモーと細い2つの共鳴が存在している場合、ある特定条件下ではスペクトル形状に非対称性が現れる。これがFano共鳴の特徴である。入射角が60°のとき、波長300 nm近傍の消光比ピークはFano共鳴の条件から外れた結果劇的に減少している。波長400 nm近傍の消光比は入射角とともに増大していく傾向がある。この特徴は数値計算結果(図 21(b))と一致している。これまでの、消光比スペクトルで見てきたように、作製したデバイスは偏光子として動作しており、その性能はFano共鳴に強く影響されている。消光比の最大値は入射角50°で約150であり、計算結果よりはるかに小さい。この違いは大きく3つの理由に帰着する。1つ目は深紫外光領域における強い光散乱である。図20(b)の反射スペクトルで説明したように、深紫外光領域におけるs偏光反射スペクトルの測定データは強い光散乱によって大きく減少している。この反射率低下に伴って、/ で定義される消光比も減少してしまう。2つ目は測定系のダイナミックレンジである。測定に用いた分光光度計では、10–5程度の極めて小さな反射率を測定することはできないため、計算結果で示したような超高消光比を実験的に示すことはできない。3つ目は入射光線の発散角である。数値計算では完全な平面波を仮定しているが、実際の入射光線には有限に広がっている。入射角に広がりがあれば、干渉が擾250300350400450500020040060080010001200Extinction RatioExperiment60°50°40°30°20°10°250300350400450500Wavelength (nm)050100150200Extinction Ratio5°10°45°50°60°(a)(b)(c)Wavelength (nm)図21消光比スペクトルの測定結果(a)及び(b)計算結果、スペクトルオフセット表示され、10°ずつ青色にハイライトされている。消光比の計算値はスペクトルの特徴を明確に表示するために対数をとった値を表示している。(c)入射角5°, 10°, 45°, 50°における消光比スペクトルの測定値100   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)4 環境制御ICT基盤技術  —基盤から社会展開まで—

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