要図を示している。テラヘルツ波の電場によってEO結晶であるZnTeの屈折率を変化させ、そこにプローブ光である光波を入射し、その偏光状態の変化から、テラヘルツ波の検出を行う手法である。1/4波長板により光学バイアスをかけ、S偏光成分とP偏光成分をウォラストンプリズムにより分離し、それぞれをバランス検出器に入射して、その差分を計測する。プローブ光の遅延を変化させながら、図2(b)の計測系を用いてテラヘルツ電場波形を検出することができる[5]。図3(a)は1 µmの非線形光学ポリマーを用いて測定された、DASTから発生したテラへルツ電場の実時間波形を示している。観測された実時間波形は最初にシャープなピークが観測され、引き続いて微細構造が観測されている。図3(b)は図3(a)から計算されたパワースペクトルである。現在の実験条件下で6 THz辺りまでの広帯域なパワースペクトルが観測された。パワースペクトルに観測されるディップは、DAST[6][7]または空気中の水(H2O)[8]による吸収から生じている。図3(c)は100 µmのZnTe結晶を用いてEOサンプリング法により測定された、テラヘルツ電場の実時間波形を示している。EOサンプリング法により測定されたシグナル強度は1 µmの非線形光学ポリマーを用いて測定されたシグナル強度と同程度であった。図3(a)と図3(c)を比較すると全体的に少しなまった波形として観測されていることが分かる。図3(d)は対応するパワースペクトルである。2.5 THz以上で急激に減少し、4 THz辺りまでのパワースペクトルが観測された。2.5 THz以上でのパワースペクトルの急激な減少は、検出媒体であるZnTeによる吸収損失とコヒーレンス長(lc)の周波数分散に起因している。観測された実時間波形は高いTHz周波数成分については検出媒体であるZnTe自体によって修正を受けている。100µmのZnTe結晶は4 THz以上で検出応答関数がほとんど0になることが知られている[9]。一方、非線形光学ポリマーのシュタルク効果を用いた検出では1 µmという非常に薄い膜で検出を行うことができる。また0.1~20.0 THzの広いTHz周波数範囲において1mの非線形光学ポリマーに対する吸収損失は0.08 dB以下であり、ほとんど無視できる[1]。また光波での屈折率(nopt)とTHz周波数帯での屈折率(nTHz)とほとんど変わらず、周波数分散もほとんどないため、コヒーレンス長(lc)は膜厚1 µmよりもずっと大きくなる。したがって、非線形光学ポリマーのシュタルク効果を用いた検出では検出媒体である非線形光学ポリマー自体によって修正を受けることなく、真の実時間波形が検出されていると考えられる。これはテラヘルツ波検出においては非常に好ましい。非線形光学ポリマーのシュタルク効果を用いたテラヘルツ波の検出では広帯域でギャップのないテラヘルツ波検出が可能である。より短いパルス幅のフェムト秒レーザーを用いた広帯域検出においては、非線形光学ポリマーのシュタルク効果を用いたテラヘルツ波の検出は更に有用であると考えられる。展望今後、検出効率については多くの改善が期待される。(1)Δμが大きい非線形光学色素の探索、(2)プローブ光3図31 µmの非線形光学ポリマーのシュタルク効果を利用して測定された(a)テラヘルツ電場波形と(b)パワースペクトル、100 µmのZnTeを用いてEOサンプリングにより測定された(c)テラヘルツ電場波形と(d)パワースペクトル172-1-3 非線形光学ポリマーのシュタルク効果を用いたテラヘルツ波検出
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