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はNiの酸化防止膜で、Ni、NbN、MgOは全て高真空中にて連続成膜している。各成膜条件の詳細に関しては[15]に記載している。比較として測定したNbN単層膜(膜厚5 nm)は、TC=11.7Kの良好な特性を示した。その一方でNiを付加したNi/NbN二層膜では、少なくとも4.2 Kまでの温度領域において、超伝導性は観測されなかった。次にNi-HEBMの金属電極における超伝導ストリップのオーバーラップ領域を想定して、Au(70 nm)/Ni(1.8 nm)/NbN(5 nm)三層膜の抵抗―温度特性を測定した(図4)。ここでAu/Ni/NbN三層膜は高真空中にて連続成膜している。比較としてNiを用いない従来型のHEBMにおける金属電極を想定したAu(70 nm)/ NbN(5 nm)二層膜及びNbN単層膜の抵抗-温度特性を併記している。図からNbN単相膜に比べAu/NbN二層膜は、Auからの準粒子拡散によると考えられる若干のTCの低下が見られたが、11 K以下において超伝導性を示した。このことは従来型のHEBM構造では電極下に超伝導性が存在することを明示している。その一方でNiをAu-NbN間に挿入したAu/Ni/NbN三層膜では、少なくとも4.2 Kまでの温度領域で、NbN薄膜の超伝導性を消失できることを確認した。以上のことからAu/Ni二層膜を金属電極に用いることでNi-HEBM構造が実現できることが分かった。2.2Ni膜厚の最適化とNi-HEBMの作製Niの付加による下層NbN薄膜の超伝導性の抑圧は、Niからのスピン電子のNbN内への拡散により生じると考えている。しかしその拡散は薄膜垂直方向だけでなく、水平方向にも拡散・影響することが分かってきた。作製したNi-HEBM(ストリップ長L = 0.2 μm)の典型的なI-V特性と断面概略図を図5に示す。ここでI-V特性は四端子法で測定しているが、約3.3 Ωの直列抵抗が存在していることが分かる。これはAu/Ni/NbN電極薄膜の抵抗と、Niからのスピン電子が薄膜内水平方向へ拡散して、電極近傍の超伝導ストリップ内に形成した常伝導NbN領域の薄膜抵抗(図5(b)参照)との和であると考えた。まず、Au/ Ni/ NbN電極抵抗を評価したところ0.8 Ωが得られ、Niにより超伝導が消失した電極近傍の常伝導NbNは、約2.5 Ωと見図3 Ni付加によるNbN薄膜の超伝導性の抑圧図4 NiによるHEBM金属電極下の超伝導性の抑圧(a)Ni-HEBMのI-V特性substrateMetalelectrodeAu (100nm)Ni (1.8nm)Ni(1.8nm)Normal-NbNNormal-NbNNbN(5nm)200nmNormalregion Total 2.5Ω(~5 nm each)RStrip=50 ΩMgO2nm(b)断面概略図図5 Ni-HEBMにおける直列抵抗(L=0.2 μm)22   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)2 光制御・ナノICT基盤技術  —基盤から応用まで—

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