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積もられた。この領域にオームの法則が成り立つと仮定すると、Niにより超伝導性が消失した領域の長さは、両電極近辺に各5 nm程度存在することになる。この常伝導抵抗領域はミキサとしては入力損になり、HEBMの更なる微細化の障害になると考えられる。そこでNi-HEBMの更なる微細化のためには、Ni膜厚の最適化が必要であると考えた。図6に、MgO単結晶基板上に成膜したMgO(2nm)/Ni /NbN (5 nm)三層膜の抵抗-温度特性を示す。ここで試料はNi膜厚をパラメータとして、0 nm、0.4 nm、0.6 nmの三種類を作製した。最上部MgO薄膜は、イオンビームスパッタ法により成膜した酸化防止膜である。まずNiを成膜しないMgO/NbN (5 nm)二層膜(Sample 1)のTCは、約11.2 Kであった。次にNiが0.4 nmのSample 2は、Sample 1に比べTCの低下が見られたが、8.9 Kで超伝導転移を示した。Sample 3はNi膜厚が0.6 nmで二試料作製したが、一つはTC = 4.4 K、もう一つは4.2 Kまで超伝導転移を示さなかった。この結果は、Ni膜厚0.6 nmにおける三層膜のTCは液体ヘリウム温度(4.2 K)付近に存在し、主としてNi及びNbN各膜厚の制御精度によりTCが分布したものと考えている。ここで実際のNi-HEBMでの電極構造は、作製プロセス上、NbNストリップ表面(膜厚5 nm)をArイオンビームで1 nm程度削った後、Au/Ni二層電極膜を成膜するため、電極下のNbN薄膜TCは、膜厚5 nmのNbNに比べ低下していると考えられる。よってNi膜厚としては、0.6 nmが適切であると判断した。今回、超伝導ストリップ長0.1 μmのNi-HEBM作製では、膜厚0.6 nmのNi薄膜を採用している。図7に作製した超伝導ストリップ長0.1 μmのNi-HEBMのSEM、断面概略図と電流–電圧特性を示す。今回の2 THz帯Ni-HEBM作製プロセスでは、主たるリソグラフィプロセスに電子ビーム描画を採用した新しい製造プロセスを考案している。この製造プロセスの詳細は、参考文献[16]において説明している。作製したNi-HEBMの超伝導ストリップ幅は0.5 μmで、素子抵抗は約86 Ωであった。しかしゼロ電圧における直列抵抗として8.7 Ωが観測された。その結果、金属電極抵抗(約0.8 Ω)を考慮しても、NbNストリップ内に存在するNiの影響による常伝導抵抗は約7.9 Ωであると推定される。今後、Ni-HEBMの更なる微細化に図6 MgO単結晶基板上に成膜したMgO /Ni /NbN三層膜の抵抗温度特性(c)4.2KにおけるNi-HEBMの典型的な電流―電圧特性図7Ni-HEBM(超伝導ストリップ長0.1 μm)のSEM写真、断面概略図と電流–電圧特性(a)SEM写真(b)断面概略図232-2 磁性材料を用いた2 THz帯超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ

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