1〜12GHzの帯域幅を持つ低雑音冷却アンプ(LNA)及び室温動作低雑音アンプで増幅、デジタルスペクトラムアナライザで測定している。アンプ等のゲイン周波数依存性は、IFピーク出力値とIF信号付近のグラウンレベルの差をIF出力値として計測することで、除外している。また全ての測定は約4 Kで実施している。図9 (a)にNi-HEBM (L = 0.1 μm)のIF帯域評価結果を示す。比較として超伝導ストリップ長L = 0.2 μmのNi-HEBMの評価結果(fC_L=0.2μm = 5.7±1.1 GHz)も図9 (b)に併記している。ここで各ミキサのIF帯域幅はLow-pass-filter modelでフィッティングして決定しており、誤差関数σを用いて測定誤差範囲を±2σで示している。図から分かるようにNi-HEBM (L = 0.1μm)のIF帯域幅(–3dB遮断周波数(fC))はfC_L=0.1μm = 6.9±1.2 GHzとなった。この結果は、超伝導ストリップ長0.2 μmのNi-HEBMに比べ1 GHz以上広帯域化しており、超伝導ストリップ長の短縮によりIF帯域幅が拡大したと考えている。またNICTにおける一般的な格子冷却型HEBM[7]に比べ約4 GHzの改善が成されており、Ni-HEBM構造の有効性を示しているものと考えている。受信機雑音温度評価系(図10)において、信号源として300 K/77 Kの黒体輻射を測定することで、2 THzにおけるNi-HEBM受信機の雑音温度評価を行った[17]。図11に黒体温度を300K/77K に変化させたときのIF出力変化を示す。ここで測定したNi-HEBM (L = 0.1 μm)は、IF帯域評価時の素子と同一素子である。得られたIF出力比(0.65 dB)から2 THzにおける受信機雑音温度としてTrx(DSB) = 1,220 Kが得られた。また信号入射光学系に配置した2 THz帯Band-pass-filterとビームスプリッタ、さらにミキサの冷却に用いられた液体ヘリウムクライオスタットの真空窓と赤外カットフィルタの損失を補正後した後の雑音温度としてTrx corr.(DSB)= 570 Kが得られた。今回のIF帯域幅及びミキサ雑音温度の各評価は共に約4 Kでの結果である。THz帯HEBMの性能報告としては共に世界トップレベルの性能にあると考えており、今後、更なる微細化による性能向上を目指す。結論THz帯HEBMのIF帯域幅の拡大を目的とした、電極構造に磁性体材料であるNi薄膜を組み込んだ、NICT独自の新しいNi-HEBM構造を提案した。まず、4図10 2THzにおけるNi-HEBMの受信機雑音温度評価系051015202530-25.4-25.2-25.0-24.8-24.6-24.410 log (PIF) (dB) Time 0.65dB@ 4K: 300 K Load, : 77 K Load図11 2THzにおけるNi-HEBMの受信機雑音温度評価結果252-2 磁性材料を用いた2 THz帯超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ
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