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3.5nm、TC > 10K)を使用してきた[8]。しかしながら、3.5 nmという極薄膜では、NbN薄膜のシート抵抗が大きく、波長100 μmの3 THz帯HEBMでは、ストリップ長0.2 μmに対して幅1~2 μmの幅広形状により、低インピーダンス化(約80 Ω)できるが、波長数μmの中赤外領域ではストリップ幅も0.2 μm程度に設定する必要があり、超伝導ストリップの高抵抗化が避けられない。そこで今回、単体のスロットアンテナに比べ、アンテナインピーダンスを約2倍にできるツインスロットアンテナを採用するとともに、NbNに比べて抵抗率が一桁小さいニオブ(Nb)をNbN上に成膜したNb/NbN二層膜の採用を検討した。図5にNbN(5 nm)単層膜及びNb(2.5 nm)/ NbN(5 nm)二層膜の抵抗–温度特性を示す。ここでNb/NbNはDCマグネトロンスパッタ法により連続成膜している。成膜プロセスの詳細に関しては参考文献[9]に記載している。図5から分かるように、常伝導状態である15 Kにおけるシート抵抗は、Nbの付加により約420Ω/sq.から約230Ω/sq. に減少した。その結果、超伝導ストリップ長さ及び幅を各々0.2 μmとすることで、アンテナインピーダンス (ZAnt.= 250 – j6 Ω)に整合可能となった。HEBMは二つの金属電極間を超伝導ストリップで接続する構造であるが、良好な電気的接続を確保するため、超伝導ストリップ上に電極がオーバーラップした構造を採用している(図4)。MIR-HEBMにおいても、両Au薄膜電極下には超伝導ストリップを形成するNb/NbN二層膜が存在する。ここでミキサ動作温度において、金属電極下のNb/NbN二層膜も超伝導状態にあると予想され、その結果、電極下からの超伝導近接効果が、電極間超伝導ストリップ内でのホットスポット形成を阻害することが危き惧ぐされる。このことは検出感度の低下や必要なLO電力の増大などの影響を与えると考えられる。既に我々は、2 THz帯HEBM研究開発において、電極下の超伝導性を抑制する磁性材料を用いた新たなHEBM構造を提案している[3]。そこで今回、MIR-HEBMにおいても、磁性材料による電極下超伝導性の消失を試みた。既に膜厚5 nmのNbN単層膜に、磁性材料として膜厚1.8 nmのニッケル(Ni)薄膜を直接付加した場合、4.2 Kまでの温度領域で超伝導性が発現しないことは確認しており[3]、ここではTcTemperature [K]or電磁波照射電⼒Resistance [Ω]超伝導ー常伝導転移領域RN超伝導状態常伝導状態ホットスポットの形成電磁波(LO+Sig)基板超伝導薄膜ストリップphphe-e-e-e-ホットスポット金属電極重なり領域金属電極重なり領域(b) 超伝導薄膜ストリップの抵抗-温度特性図4 HEBMの構造と動作概要(a) HEB素子の模式図510150100200300400500600NbN(5 nm) TCM= 11.6 KSheet resistance (sq .)Temperature (K)Nb(2.5 nm)/NbN(5 nm) TCM= 9.4 KIref.=10 A図5 Nb/NbN二層膜によるシート抵抗の低減(δ~1 nm)MgO(100)subst.Au 55 nmNi 1.8 nmNb2.5-δnm/NbN5 nm(δ~1 nm)MgO(100)subst.Nb2.5-δnm/NbN5 nm510150100200300400500600TCM= 10.2 KAu(55 nm)/Ni(1.8 nm)/Nb(2.5-nm)/NbN(5 nm)Nb(2.5-nm)/NbN(5 nm) Sheet resistance (sq.)Temperature (K)0.00.20.40.60.81.01.2Normalized resistance (R@18K=1)図6 Ni極薄膜付加によるNb/NbN超伝導性の抑圧30   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)2 光制御・ナノICT基盤技術  —基盤から応用まで—

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