Nb/NbN二層膜について、Niによる超伝導性の抑圧を試みた。まず超伝導ストリップを構成するNb(2.5nm)/NbN(5 nm)二層膜を成膜、次に想定しているMIR-HEBM電極の作製プロセスと同様に、表面酸化層除去を目的としたArイオンビームによる約1 nmのNb表面のエッチングを行い、その後、Ni (1.8 nm)、そしてAu (55 nm)を連続成膜した。図6にAu/Ni/Nb/NbN多層膜の抵抗温度依存性を示す。結果としてAu/Ni (1.8 nm)二層膜の付加により、多層膜は少なくとも4.2 Kまで超伝導性は観測されないことを確認した。今回のMIR-HEBMには、このAu/Ni二層膜を電極膜として採用している。中赤外領域で動作するアンテナ構造を作製するには、ナノスケールの微細構造構築技術が必要となる。そこですべてのリソグラフィプロセスに電子ビームリソグラフィを使用し、MgOを無機レジストとして用いた新しい製造プロセスを考案した。この製造プロセスの詳細はすでに報告している[4][5][9]。図7(a)は、作製したMIR-HEBMのSEM写真を示す。挿入図はアンテナ給電点付近の拡大図である。SEM写真から得られた実際の超伝導ストリップの長さ及び幅は、それぞれ約0.18 μm、0.26 μmであった。試作したMIR-HEBMの典型的なI-V特性を図7(b)に示す。作製されたHEBMの素子抵抗として、アンテナ設計インピーダンスに近い約200 Ωが得られた。HEBMに中赤外光を照射した場合、そのエネルギーは主にアンテナ給電点に配置した超伝導ストリップで消費される。その結果、ストリップ内の電子温度は上昇し、超伝導ストリップの臨界電流(IC)は減少する。しかし、今回使用したツインスロットアンテナは共振型アンテナであり、明確な偏波面依存性が存在し、MIR-HEBMの中赤外光応答には偏波面依存性が予想された。図8に図7(b)素子とは異なるが、同一のツインスロットアンテナを有するMIR-HEBMの照射光偏波面依存性を示す。ここで照射光としてアンテナ偏波面に対して垂直もしくは水平偏波面の中赤外光(波長4.89 μm)を使用、照射電力は共に同一になるようにパワーメーターで調整・確認している。図8から垂直偏波の中赤外光照射に対しては、ICは照射前の約90%に減少したが、水平偏波に対しては照射前の3%まで大幅に減少した。このことはアンテナ動作に起因する偏波面依存性の存在を明確に示している。(a)MIR-HEBMのSEM写真及び断面概略図2.2W=0.2(designed)S=1.60.6Unit : μm0.60.60.60.60.60.2DetectorChoke filter(designed)abcd0.3 μm0.180.26DetectorAu55nmAu55nmNi 1.8 nmNb2.5-δnmNbN5.0 nmab0.2 μmMgOSingle-crystalsubst.(0.3mm-thick)Au55nmAu55nmcd0.2 μmMgOSingle-crystalsubst.(0.3mm-thick)Cress-section “a-b” Cress-section “c-d-20-1001020-0.10-0.050.000.050.10IC=115 ARN=200 T=3.7 K 20170616D-1Current (mA)Voltage (mV)(b) MIR-HEBMの典型的なI-V特性.図7 MIR-HEBMのSEM写真と電流―電圧特性-4-2024681012-0.03-0.02-0.010.000.010.020.030.04Current (mA)Voltage (mV)MIR Ant.MIR // Ant.MIR-light offIC0.90・IC0.03・ICIncident P. =70 mWCW Laser (λ=4.89 μm)20160830D-2T=3.9 KMIR-light onMIR-light on図8 中赤外光照射におけるMIR-HEBMの偏波面依存性312-3 中赤外超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサの研究
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