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MIR-HEBMの応答特性評価3.1MIR-HEBM評価測定系の構築誘電体基板上に作製された薄膜アンテナの利得は、通常、誘電率の高い基板側が強くなるが、基板誘電率に応じて空間側にも若干存在する。厚い誘電体基板上に形成されたスロットアンテナの基板方向Pdと空間方向Pvの放射電力比は次式で表される[5]。32 (1)ここでεdは基板材料の比誘電率である。中赤外領域でのMgO基板の誘電率は、THz領域の約28%にまで減少し、εMgO = 2.637 (n = 1.624@λ= 5.35 μm[6]から導出)が報告されている。その結果、空間側の前面利得は、基板側の25%程度存在することが予想される。今回、この空間側利得を利用することで、ビームスプリッタを除外したミキサ雑音温度評価測定系を構築した。図9に構築したMIR-HEBM雑音温度及びIF帯域幅評価測定系を示す。局部発振源(LO)としては波長4.89 μm (61.3 THz)の中赤外量子カスケーレーザ (QCL)を用いている。LOは、バンパスフィルタ(BPF)、CaF2真空窓、サファイア熱遮蔽、オフセットパラボラミラーを介して空間側からHEBMに照射している。また、室温黒体及び1,100 K黒体炉からの熱輻射を信号源として使用しており、BPF、CaF2真空窓、サファイア熱遮蔽を介してクライオスタット内に導入、CaF2レンズとARコート付MgO超半球レンズにより集光してHEBMに照射している。ここで信号源側の光学系全透過率は約50%であった。ミキサからのIF信号は、バイアスティーを介して1~18 GHzの冷却低雑音増幅器によって増幅した。ここで、MIR-HEBMのIF帯域幅評価のための電圧パルス波形観察においては、冷却低雑音増幅器からの信号を直接オシロスコープ(KEYSIGHT社製 Infinium 9000:帯域幅4GHz)で波形観測した。一方、ミキサ雑音温度評価においては、冷却低ノイズ増幅器からのIF出力を更に8k ~3GHz、利得40 dBの室温増幅器で増幅し、中心周波数1 GHz、バン幅1 GHzのBPFを介して、ダイオー検出器を用いて検出している。図9において、MIR-HEBMを実装する冷凍機とLO源であるQCLとは、別の筐体に固定されている。そのため、これまではGM冷凍機の機械振動等により、HEBMとLOとの結合効率が周期的に変化してしまい、ミキサ雑音温度評価に必要な、安定したIF出力評価の障害となっていた。そこで今回、ボイスコイルを用いたLO照射電力の安定化を試みた。適切なLO照射の下、直流電圧源でHEBMに電圧バイアスを印加した場合、HEBMに流れる直流電流は、実際に超伝導ストリップで消費されるLO電力に依存して変化すると考えられる。そこで直流電流を常に一定になるよ3CH1CH1AmplifierGain:35dB1-18 GHzAmplifierGain: 40 dB8kHz-3 GHzBiasteeHEBOffset parabolaCaF2windowMgOlensCaF2lensF=50 mm¥30 K Radiation shield300 Kblack loadSignalLO4 K stageChamber90°Quantumcascadelaser 4.89 μmBandpassfilter0.5-1.5 GHzDetectorHp8473CBandpass filter 2λC:4783 nm, BW:471 nmT: 85 %Sapphire radiation shield T: 69 %Blackbodyfurnace1100 KCaF2 windowT: 93 %Local Oscillator (LO)Sapphireradiation shieldSignalBandpass filter 1λC:4890 nm, BW: 85 nmT = 84 %Oscilloscope20GS/s4GHzBWHEBM bias(Voltage or current source)Voice-coilLO stabilizerFrom HEBM bias (Current)Analog PIDcontrollerReference voltageTo Voice-coilLO stabilizer図9  MIR-HEBM雑音温度及びIF帯域幅評価測定系32   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)2 光制御・ナノICT基盤技術  —基盤から応用まで—

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