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らの出力がSFQパルスに変換される。二つの入力の順序によりSFQ回路から出力信号が得られるかが決まる。SFQ同時計数回路は、START端子の方から早く信号が来たときのみ信号を出力し、START端子への信号入力後ある特定の時間内(時間窓)にSTOP端子への信号入力がない場合は信号を出力しない。入力端にSSPDではなく高速なパルス発生器を接続することで、SFQ同時計数回路自体のジッタを評価することも可能で、およそ15 psという優れた時間分解能で同時計数が可能であることを確認した[21]。このSFQ同時計数回路とSSPDを接続して、古典光を用いた2光子干渉実験にも成功した[22]。また、SFQ同時計数回路に改良を行い、二つの入力の順序にかかわらずある時間内に二つの入力端子に信号が入力されると信号が出力される回路の動作実証に成功している。これは時間窓の中で光子の数を2個まで計測できる光子数識別システムにも応用できる。この回路に室温のパルス発生器から入力を与えて時間窓の評価を行った。図4に得られた結果を示す。縦軸が二つの入力ポート両方から信号が入力された時に得られる出力信号のカウント数、横軸が二つの入力信号の時間差を示している。入力信号の時間差が0付近のある時間領域でのみエラーフリーで同時入力の出力が得られており、一方のポートのみに入力があった場合の出力と合わせて、入射光子数“0”、 “1”、 “2”を判別できる光子数識別器が実現できる。図3では回路へのバイアス電流が12 mA、16 mA、20 mAの3種類の結果を示しているが、供給するバイアス電流で同時計数とみなす時間窓の幅を調整できることが分かる。この回路をSSPDと接続し、2光子までの光子数識別システムとしての動作を確認しており、大阪大学で開発を進める非古典光を用いた2光子干渉システムでも使用されている。3.2単一光子イメージングシステムマルチピクセルSSPDのピクセル数を大幅に増やすことができれば、光子計数感度を持つ究極のカメラを実現できる。多くのイメージセンサが1 µm以下の光波長に感度を持つのに対して、SSPDでは紫外から中赤外という幅広い波長範囲で使用できるため、生体深部に侵入する1 µm付近の光波長を使用したバイオイメージングや、中赤外領域の超高感度イメージセンサ、SSPDの低ジッタという特長を生かした超高精度の測距イメージング等、幅広い応用が可能となる。イメージングシステムを実現するためには2次元状に配列された大規模なSSPDアレイが必要となり、それに伴う配線数の増大を極力抑える信号処理が必要不可欠であMC-DC/SFQ converterMC-DC/SFQ converter高時間精度順序判定回路START信号STOP信号voltagedriveroutputinput1input2図2SFQ同時計数回路のブロックダイアグラム。START信号とSTOP信号の入力順序を判定する回路になっている。図3SFQ光子数識別回路で得られた実験結果。二つの入力信号の時間差を横軸に取り、縦軸は二つの信号を検出した時のカウント数である。二つの入力信号の時間差が小さい時にカウント数が増加しており、この領域が時間窓となる。(a)(b)図4 (a) 64 chイベント駆動型SFQエンコーダの顕微鏡写真。(b) 64ピクセルSSPDアレイと接続して、光子照射を行って得られた光子検出分布。40   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)2 光制御・ナノICT基盤技術  —基盤から応用まで—

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