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高感度・高分解能なセンシングやイメージングなどの実現に必要不可欠であることを示している。このような背景から、電波の割当てや周波数の再編を管轄する総務省は、将来の周波数の逼ひっ迫ぱく状況を緩和し、新たな周波数需要に的確に対応するため、2005年度より「電波資源拡大のための研究開発」を実施し、①周波数を効率的に使用する技術、②周波数の共同利用を促進する技術、③高い周波数への移行を促進する技術についての研究開発を推進している[9]。特に③では、携帯電話やスマートフォン、Wi-Fiなどで利用が逼迫しているため、6 GHz以下の周波数を使用する無線システムを比較的逼迫の程度が低い高マイクロ波帯(~30 GHz)へ移行したり、未利用周波数帯の“電波・周波数資源”を開拓する高周波利用技術に関する研究開発が行われている。近年では、通信速度を10倍以上高速化する次世代無線通信技術として、未利用であるミリ波・テラヘルツ波周波数帯を用いた超高速無線通信技術、特に周波数の割当てがなされていない275 GHz以上の周波数帯で動作する電子/光デバイス・集積回路・システムなどの研究開発が盛んに行われている。これは、ミリ波・テラヘルツ波帯における超高速かつ大容量な無線通信の実現が、ネットワーク上のデータトラフィック増大に伴うバックホール回線やモバイル端末間の高速・大容量通信の実現に寄与するものと期待されているためで(図1)、InGaAs系HEMTだけでなくシリコン(Si)CMOS集積回路を用いた送受信機による300 GHz帯高速無線通信の研究開発や実証実験も活発に行われている[10]–[16]。我々は、いまだ十分に利活用が進んでいないミリ波・テラヘルツ波帯(30 GHz~3 THz)の電波資源拡大及び有効活用技術の確立や、将来の超高速無線通信の実現に必要となるIII-V族化合物半導体であるInGaAsやGaNなどを電子走行層(チャネル層)に持つHEMTに注目し、その高速・高周波・高出力性能の向上を目指してきた。本稿では、III-V族化合物半導体電子デバイスの高速・高周波化について、100 nm以下のゲート長(Lg)を有するGaN系HEMTの作製プロセスやデバイス特性を紹介し、さらに電子デバイスの性能・特性評価技術、特に高周波計測技術について概説する。化合物半導体電子デバイスの高速・高周波化化合物半導体電子デバイスとして、我々はHEMT2図1 ミリ波・テラヘルツ波帯周波数と利活用イメージ図2 HEMTの模式図と小信号等価回路46   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)3 超高周波ICT基盤技術  —素子から回路まで—

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