ゲート電極構造や再成長コンタクト層などの工夫により、AlN/GaN/AlGaN HEMTで約600 GHzのfmaxと450 GHzを超えるfTが、また高い分極を示すInAlN/AlNバリア層を有するHEMTにおいてfT = 370 GHzがそれぞれ報告されている[17]–[19]。さらに、周波数94 GHzで6.7 W/mmもの高い出力電力密度がN極性GaN MIS-HEMTで報告されている[20]。これらの性能は、GaN-HEMTなどのGaN系トランジスタや増幅器が高出力・高耐圧デバイスとしてだけでなく、第5世代移動通信システム(5G)や次世代移動体通信システム(Beyond 5Gなど)で必要とされる高速・高周波・高出力特性を兼ね備えた電子デバイスとして有望である。2.3GaN系HEMTの作製プロセス優れた高速・高周波特性をもつGaN-HEMTの実現には作製プロセスの最適化だけでなく、エピタキシャル結晶の設計と最適化、そして実際に良質な結晶を成長することが重要である。図4は、作製したIn0.18Al0.82N/AlN/GaN HEMTの断面模式図である。エピタキシャル層としてGaNバッファ層(2000~1600 nm)、AlNスペーサー層1 nm及びIn0.18Al0.82Nバリア層(層厚:2~10 nm)で構成されており、サファイア、炭化シリコン(SiC)、及びGaN基板上にMOCVD成長した。表1は、各基板上にエピタキシャル成長したIn0.18Al0.82N/AlN/GaN HEMT作製用結晶のホール測定結果で、In0.18Al0.82Nバリアの厚さが10、5、3、2 nmのエピタキシャル構造の電子移図4 作製したGaN-HEMTの断面模式図図5 GaN-HEMTの作製プロセス表1 GaN-HEMT作製用結晶のホール測定結果SubstrateInAlN[nm]µ[cm2/Vs]Ns[cm-2]ρ□[Ω/sq.]Rc[Ωmm]Sapphire[21]108642.83×10132590.89Sapphire[21]511602.52×10132140.62SiC[21]315801.60×10132480.19–0.34GaN[22]315601.64×10132450.3–0.4SiC[22]217201.16×10133120.1748 情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)3 超高周波ICT基盤技術 —素子から回路まで—
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