10 dB程度の利得が期待でき、E帯(60~90 GHz)PAへの応用に道を開くものである[28]。2.4更なる高速・高周波特性を目指してワイバンギャップ半導体であるGaNとは異なり、バンギャップの小さな半導体(ナローバンギャップ半導体)であるインジウム・アンチモン(InSb)は、III-V族化合物半導体の中で最小の電子有効質量を持ち、InSbをチャネルとするHEMTは高周波・低消費電力デバイスとして期待されており、InSb-HEMT作製用結晶の成長技術の高度化、チャネル材料・構造の改良、デバイス作製プロセスの改良などについて検討を進めている。なお、InSb-HEMT作製用エピタキシャル結晶はGaAs基板上にMBE法にて成長される。Lg = 50 nm、Wg = 50×2 µmのInSb-HEMTにおいてfT = 316 GHz、fmax = 192 GHz(Vds = 0.5 V、Vgs = −0.06 V)を得た。さらに、Lg = 200 nmではgm = 1.1 S/mmを達成し、これまで報告されているInSb系HEMTでの最高値と同じ値を得た[29][30]。今後、更なる特性向上を目指すとともに、インジウム・ガリウム・アンチモン(InGaSb)やグラフェンなどの新規材料によるトランジスタなどの研究開発を実施し、更なる高速・高周波化、高出力化を目指す。高周波計測技術高速・高周波特性に優れた化合物半導体電子デバイスの実現には、前述のデバイス作製用結晶の高品質化やデバイス作製プロセスの最適化だけでなく、作製されたデバイスの特性や性能を正確に測定・評価可能な技術が必要不可欠である。本節では化合物半導体電子デバイスなど電子デバイスの性能・特性評価技術、特に高周波計測技術について概説する。3.1Sパラメータ測定GaN-HEMTなどの電子デバイスの性能評価指標として、DC特性(電流・電圧、電気容量など)や高周波特性(Sパラメータ、出力特性など)があるが、これらの指標はベクトル・ネットワークアナライザ(Vector Network Analyzer: VNA)、スペクトラムアナライザ、半導体パラメータアナライザ、信号発生器(Signal Generator: SG)、パワーメータ/センサ、DC電源、さらにはオンウェハ測定を行うための高周波プローブやプロービング・ステーション、電波暗室などを組み合わせて計測される。オンウェハ測定とは、被測定デバイス(Device Under Test: DUT)である電子デバイスのベアチップやウェハ上の各電極に高周波プローブと呼ばれる針を直接コンタクトし、DC特性や高周波特3図10 EHF帯オンウェハ・ロード・ソースプル評価測定システム(b)図9出力特性(a)GaN基板上MIS型GaN-HEMT(周波数70 GHz)、(b)InP基板上InGaAs-HEMT(周波数90 GHz)(a)513-1 ミリ波・テラヘルツ波帯無線通信を実現する化合物半導体電子デバイス技術と高周波計測技術
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